新しき絆・2

そして一気に明るくなった管制塔の中では、美智恵は1人冷静に考え込む

恐らく何かしらの文珠を使ったのだろうが…

それにしても見事だった


(やはり、危機になれば化けるのね…)

最近知った横島の裏側を考えれば、普段の頼りない姿がフェイクである可能性が高いと予想している


しかし、それを抜いても今回の行動は驚きであった

高度数千メートルの上空で悪霊を除霊し、飛行機を地上に降ろす

それがどれだけ難しいか美智恵は理解している


(あの戦いでの経験が、確実に彼の中に根付いてるわね)

美智恵は今回の件で横島の精神成長を肌で感じた

あれだけの経験をしたのだから、成長はある意味当然なのだが、問題は…


(何故? 何故こうも令子と横島君が、すれ違う道を歩むことになったの? やはり魔鈴が原因なの?)

美智恵は今まで調べた情報を頭の中で繋げて考えるが、纏まらない

アシュタロス戦以前の令子と横島の関係を考えれば、何かしらの絆はあったはずなのに、それが切れた原因がわからない

そもそも美智恵は、魔鈴と横島が接近した理由も知らないのだ
 
 
(情報が少なすぎる…)

唇を噛み締め、美智恵は判断を保留する

判断するだけの情報が無いのではどうしようも無い

令子と横島の関係が壊滅的に壊れてるのを知ったのは、人工幽霊の記録を見たついさっきなのだから


そこで美智恵は考えを止めて、西条や令子に飛行機無事着陸の連絡を入れる


『そう… わかったわ』

飛行機無事着陸の知らせを聞いた令子は、言葉少なく返事した


『令子、あなた… まあいいわ。 後で事情を聞かせてもらうわ』

美智恵はいろいろ聞きたいことがあるのだが、電話で話す内容ではないので止める


電話を切った令子は、呆れたような安心したような複雑な表情でホッと一息つく

「全く……」

それ以上は言葉を続けることは無かったが、東京に戻って自分に逆らった丁稚を教育しようと気合いを入れた



同じ頃、百合子と大樹の元にも関係者から、飛行機無事着陸の知らせが届く

同時に横島が悪霊を退治して、飛行機を着陸させた情報も入った


「マズいわね…」

詳細な情報を聞いた百合子は難しい表情になる
 
 
「ああ、このままじゃ目立ってしまう」

大樹は空港への道を運転していたが、その場に止まり考え込む


「事実が公表されないようにしないと…」

百合子は少し困った表情でどこかに電話をする


「全く、馬鹿息子は… 世話ばかりかけさせる」

大樹も愚痴をこぼしながらどこかに電話をかける



そして空港屋上で祈るように見守っていた魔鈴は、嬉しそうにホッと胸をなで下ろす


「良かった…」

その瞳にはうっすら涙がにじんでおり、彼女がいかに心配だったかがわかる


「あいつが飛行機事故なんかでやられる訳無いだろ」

雪之丞は当然のように語ったが、屋上で飛行機をジッと見つめていたとこを見ると、本心では心配していたようだ


「でも、飛行機事故は横島さん達にはどうしようも無いですから…」

魔鈴も横島が帰ってくると信じている

だが、霊能力と関係無い飛行機事故だからこそ、万が一の不安も大きかった


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