新しき絆・2

その頃、機内は緊張感に包まれていた


素人の横島が無線で受けた指示を的確に行動に移していく

しかし細かなタイミングは管制塔からはわからない為、横島任せになっている


タマモ、シロ、おキヌは横島が文珠を使ってることに気がついているが、それでも不安は拭えない


銀一とCAは、もはや出来ることは無く横島に運命を託すつもりで祈るように見つめていた


飛行機の高度が徐々に下がっていく

細い滑走路に降りる為、飛行機は旋回しながら羽田へ向かう



管制塔でも関係者が、祈るような気持ちで横島との通信を聞いている

空港では一般人の避難は終わっており、居るのは警察や消防やレスキュー隊と、空港の屋上で隠れている雪之丞のみだ


雪之丞は横島が飛行機に乗っているならば、無事帰ってくるだろうと確信していた

そんな雪之丞の元に猛スピードで空を飛び現れたのは魔鈴である


「雪之丞さん! 飛行機は!?」

魔鈴は息を切らしながら雪之丞に確認した


「これからだよ。 多分そろそろ見えてくるはずだ」

雪之丞の言葉に魔鈴は、空を見上げて祈るような気持ちで見つめる



そして飛行機は、窓から見える街が近く感じるほど高度を落としていた

目の前にはまだ少し遠いが、空港が見えるほど近くまで迫っている


横島はそんな中、プレッシャーと緊張感で押しつぶされそうな感覚を味っていた


(あの時みたいだな…)

ふと横島の脳裏に蘇るのは、巨大なコスモプロセッサーとアシュタロスのこと

そして、自分の中で声をかけ続けたルシオラのこと


今回は世界がどうとか言う危機では無いが、失敗すれば多くの人の命と、親友や仲間の命が…

(なんで俺はこんな役回りばっかりなんだか… 真っ先に逃げていた頃が懐かしいな)


横島は少し苦笑いを浮かべ、再び気合いを入れる

(俺は必ず生きて戻る! ルシオラと魔鈴さんが俺を必要としているんだから…)



飛行機は周りの人間が驚くほど順調に着陸に向かう

それだけ文珠の知識と技術が役にたっていたのだ



そして運命の時


飛行機は車輪を出して、着陸に挑戦する時が来た

管制塔では最後まで落ち着いてやれば大丈夫だと、横島を励ましながら指示を送る


事実を知る関係者

全てが息をするのも忘れるような緊張感の中




飛行機は無事着陸に成功した



飛行機が止まった瞬間、いたるところで喜びの声が上がる!

半ば諦めの空気が支配していた管制塔の中の関係者は、特に喜びの声を上げた

あちこちで喜び抱き合う者

拍手を惜しまない者など、みんな飛行機の奇跡の生還を喜んでいた


『ハネダ・エアポートより、GAG202便へ、ご苦労だった横島君!』

渡辺管制官も笑顔を見せていた


「疲れた…」

横島は文珠を解除してグッタリしてしまう


「横っち、やったな!」

「先生!! お見事でござった!」

銀一とシロは嬉しそうに横島に駆け寄る

「横島、お疲れさま」

タマモはホッと一息ついて、手に持っていた文珠をしまう


「ああ、本当に疲れたよ。 二度と飛行機の操縦はしたくないな…」

横島は銀一やシロやタマモを見て苦笑いを浮かべた


そんな中おキヌは、みんな無事だった喜びを感じていたが…


安心すると今日1日の横島達との遠い距離感を思い出し、声をかけれずにいた


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