新しき絆・2

相談の結果

横島とタマモは一つの作戦を思いつく


2人はシロと銀一とおキヌに作戦を伝え、3人を搭乗口から見えない位置に隠れさせた


「さてやるか…」

気合いを入れた銀一は、搭乗口のドアを開けて悪霊と対峙する

ゴォォォー

「話聞いてやるから来いや!!」

凄まじい風が吹き荒れる中、銀一は悪霊に叫んだ


「近畿くーん、 来てくれたのね! 一緒に死んで!!」

悪霊は銀一を捕まえようと手を伸ばすが…

銀一の姿がふっと消える


「近畿くーん!! 逃がさないわ!」

悪霊は銀一を追いかけるように機内に突進する


「ウワッ!!」

悪霊は機内の入り口を超えたところで突然動けなくなる

悪霊は意味がわからずに動こうとするが、体は全く動かない


「なんで、俺を好きになったんだ?」

動けない悪霊に銀一は静かに語りかける

「意識レベルは高い。 記憶はあるはずだろ?」

銀一はそう語りかけて悪霊を見つめた


「うっ… 私は…」

悪霊は何かを思い出そうと苦しみだす


そんな悪霊の足元には文珠が2つ輝いていた

文字は【縛】と【想】


「何故愛してるなら、相手の幸せを願わない…」

銀一の言葉に悪霊の表情が変わった

憎しみに満ちていたその表情が、穏やかになっていく

それと同時に、悪霊が纏っていた陰の気も徐々に薄れていった


悪霊が見ていたのは銀一の目である

穏やかな優しさの中にある、凄まじいほどの悲しみが悪霊に伝わっていた

悪霊はそれに魅入られたように穏やかになっていく


この瞬間、銀一の後ろでは隠れていたタマモが密かに幻術を使う

タマモの幻術と文珠の効果により、悪霊は生前を思い出していく


「私は…」

陰の気が消えて行き、悪霊は幽霊に戻りつつあった

そんな中、幽霊は語っていく

「私は小さな頃からずっと病弱だった… 友達も居ないし、遊びにも行けない。 そんな私の唯一の楽しみはテレビだった… そして偶然テレビで見た近畿くんに恋をした。 彼は私に笑ってくれたわ。 私は、彼と一緒の日々を想像して生きる気力を得て行った。 でも…、私は死んでしまった……」

泣いているようだった幽霊の悲しみは、その場の人間に伝わる


ふわっ

銀一は悪霊を優しく抱きしめた


「辛かったんだな… 寂しかったんだな…」

銀一は幽霊を宥めるように、優しくささやいていく


「でもな… 本当に愛してるなら、相手の幸せを願うべきだ。 愛をもらった分、相手の笑顔を守るべきなんだ」

銀一の言葉を幽霊は静かに聞いていた


「あなたも、愛した人を失ったのね…」

幽霊は静かに銀一を見て微笑む

それは先ほどまでとは違い、穏やかな女性であった


「気が付いていたのか?」

その瞬間、銀一の姿が揺れるように変化し、横島に変わる

そして横島のポケットでは、【変】【化】の文珠が消えていく


「私はずっと近畿くんを見てきたわ。 彼はそんな悲しい目はしないもの」

幽霊の言葉に、横島は苦笑いを浮かべた
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