新しき絆・2

「わかりました。 美神さんが脱出したら俺達も脱出します」

横島は少し悩んだがこの場は令子の言葉に従う


「じゃあ、行くわよ! いつ墜落するかわからないんだから!」

令子は素直に聞いた横島を一瞬探るように見つめるが、時間が無いのを思い出して飛行機の搭乗口に向かう


「今から私が外に出て悪霊を退治します。 まずは悪霊を退治してからよ」

令子はコックピットにいるCAに説明して、外に出るタイミングを計る


令子が何故わざわざCAに説明したかと言えば、飛行機が墜落した時と墜落しなかった時の問題を考慮したからである


見習いの横島やおキヌや妖怪のタマモやシロは、令子の力があれば金で乗って無かったことにして誤魔化せる


だが令子本人だけは別である

CAを通じて、GSが飛行機に乗っていることが飛行機外に伝わる可能性が高い

それに万が一飛行機が墜落しなかったら、CAや乗客達は逃げた令子を叩くだろう


そう考えると未成年の横島達は文珠で逃げても問題無いが、令子は何かしらの除霊しようとした工作が必要であった


最もGSがこのような危機的状況で、無関係な人を助けなければいけないような決まりは一切無い

GS免許は心霊取り扱いの免許であり、身分は自営業で公務員などでは無いのだから


しかし日本人は、自分が出来ない事を棚に上げて、逃げて生き延びた者を非難して叩くだろう

特に令子のように名実ともに一流として有名なGSなら、マスコミは喜んでスキャンダルを書き立てる

令子の行動は、そんな連中を敵に回さない為の行動であった


この点に関しては、横島より令子の方が遥かに深く考えている

横島が悩む中、令子は現状を的確に判断して総合的に結論を出していた



令子は搭乗口を開ける前に横島とおキヌに視線を送る

自分が失敗したら、どさくさに紛れて脱出しろと言う意味を込めて


「じゃあ、行くわよ!」

令子は翼に張り付く悪霊を確認して、ドアを開ける


ゴォォォー

凄まじい風が飛行機内に入って来る


その時、悪霊はその手を令子に伸ばしていた

「バーカ! あんたが来ることぐらいわかってたわよ、ブス!」

悪霊は令子の足を掴んで放り投げてしまう


「うわっ…」

令子は本当に驚いた様子で飛ばされていく

元々除霊の振りをして逃げ出すつもりだった令子は、悪霊を倒す気が無い

その気持ちが油断に繋がっていた


「横島、どうするの?」

タマモは遠くなる令子を見つめながら横島に問いかける

タマモとて死にたくは無いし、無関係な人間の為に横島に出来ないことをさせて死なせようとは思わない

横島の判断に従うつもりであった


「美神さんの言うことは正しいのかもしれない。 人間は勝手だからな… 俺達はいい、逃げてもどこかで静かに生きればいいんだからな。 でも、銀ちゃんは無理だ」

横島は険しい表情でタマモに語っていく

「銀ちゃんは有名人なんだ。 空港でもたくさんの人に見られてるし、いくら美神さんでも銀ちゃんまで乗って無いことにするのは無理だ。 俺達と一緒に逃げれば銀ちゃんの夢が潰れてしまう。 かと言って銀ちゃんは死なせたくない」

横島は拳を握りしめ言い切る


「そう… なら最後までやれることをやってみるしかないわね」

タマモはそう呟き、考え込む


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