新しき絆・2

一方令子は、おキヌを連れて座席に戻っていた


「美神さん、どうしましょう?」

おキヌは不安そうに令子を見つめる


「どうにもならないわね… 悪霊は機外に出ちゃったし、肝心の飛行機を動かすコックピットは滅茶苦茶だし、パイロットも重体で操縦は無理… お手上げよ」

令子はやる気が無い様子だったが、冷静に現状を見ていた


「そんな… なんとかならないんですか?」

おキヌはそれでも令子ならなんとかしてくれると、希望を持っていたが…


「私の能力では無理よ。 この高度と速度で飛ぶ、飛行機の機体に張り付く悪霊を退治するのはね。 それに、万が一悪霊を退治してその後どうするの? 私は飛行機なんて操縦無理よ。 おキヌちゃんは知らないでしょうけど、飛行機は本当に繊細なの。 コックピットが破壊されて飛ぶのは無理なのよ。 正直、エンジンがいつまで動いてるかも怪しいわ」

令子は冷静におキヌに説明を続けるが、おキヌは納得がいかないようだ


「おキヌちゃん、私達はただのGSなのよ。 神様でもなんでも無いの。 出来ることと出来ないことがあるわ。 それに、GSは人助けが仕事じゃないのよ? 可哀想なんて言ってたら命が幾つあっても足りないわ」

令子は知り合いの神様を思い出しながら、おキヌを説得する

(神様でさえ、役立たずなんだから…)
令子は心で呟きながら、自分はパラシュートを付けた


「美神さん?」

おキヌはパラシュートを付ける令子を不思議そうに見つめる


「私は、悪霊を退治する振りをして脱出するわ。 おキヌちゃんは文珠をあげるから、隠れて脱出して!」

令子はおキヌに文珠を渡すが…


「美神さん、他の人を見捨てて逃げるんですか!」

おキヌは驚き令子に問いただす


「おキヌちゃん… なら、みんなで飛行機と一緒死んでやればいいの?」

令子は厳しい眼差しをおキヌに向ける


「そんな… 助かる方法は無いんですか?」

おキヌは戸惑いながら令子を見るが


「文珠なら可能性はあるけど…、あれは効果がどうでるか、やってみないとわからないし、限界が曖昧なのよ。 どんな文字を込めて、悪霊を退治して飛行機を地上に下ろすの? 私は見ず知らずの他人の為に命を賭ける気は無いわ」
 
令子は少し考えて、おキヌに僅かな可能性を語るが、自分がやるのは嫌なようだ


一流のGSである令子

彼女の凄さは、何があっても自分は生き残ると言う信念だろう


大金のかかった仕事でも無いのに、命を賭けて他人を救うなど、リスクが大きすぎるのだ


「そんな…」

おキヌは返す言葉が見つからずにうなだれる


「時間が無いわ! 良く聞いておキヌちゃん。 悲劇なんて毎日世界中に溢れてるのよ。 そんなの一々気にしたら生きて行けないわ!」

令子は真剣な眼差しでおキヌを説得をしていく

「横島クンにも話すから、あんた達4人は文珠で脱出しなさい。 後は私が誤魔化すから! いい! 自分の命を守ることを最優先にしなさい!」

令子は悩むおキヌにしっかりと言い聞かせ、再びコックピット裏の横島達の元に歩いていく


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