新しき絆・2

「いや…、大変な意味が違うんだが…」

さすがの銀一も顔が引きつっている

熱狂的なファンなどは多いし、一部にはストーカーまがいのファンもいるが…

それでも悪霊のストーカーなど初めてである


「この飛行機を落とせば、私達いつも一緒よオオッ!! 近畿クーン」

悪霊は銀一に不気味な笑みを浮かべて、割れた窓から外に向かう


「マズいな… 外に出られたら対処のしようが無い」

横島は静かに呟き考え込む


時速数百キロは出てる、ジャンボ機にへばりつく悪霊を退治するのは困難である


「私がついてるから大丈夫よ! 誰も死なせたりしない」

令子は困惑する銀一や、考え込む横島達に自信満々に言い放つが…


横島とタマモとシロは疑うような視線を向ける

横島達は令子を何一つ信じてない


令子はそんな横島達を無視して、機内アナウンスを始める


『お客様の中で、飛行機を操縦できる方は居ませんか?』

令子は勝手にそんなアナウンスをしてしまう

「不用意なアナウンスしないで下さい! パニックになります!」

CAは令子に怒鳴るが、すでに遅い


客室では乗客達がパニックになり、CA達では抑えきれなくなっている


「タマモ、幻術で乗客を黙らせてくれ。 あれじゃあ、収集がつかん。 シロとおキヌちゃんは、機長と副機長のヒーリングをしてくれ!」

横島は一刻を争う事態にも関わらず、緊張感の無い令子に危機感を覚えて、自分が指示を出した


(どうせあんたは、危なくなれば1人だけ逃げる方法があるんだろ?)

横島はこの場に置いても緊張感の無い令子を見て、確信を持っていた

最近は渡してないが、数ヶ月前まで毎週のように横島から取り上げた文珠を、令子はたくさん所持している

文珠を使えば、1人逃げるのは簡単だろうと…


「わかったわ」

「任せるでござる」

タマモとシロはすぐに動き出した



「お願いします! 落ち着いてお席に座って下さい!」

「さっきの放送は何だ! 教えないなら自分で見に行くぞ!」

客室では、CAが動かないように必死に説得して、操縦室に確認に行こうとする人達をなんとかドアの前で抑えている


子供などは泣き叫び、弱い者は祈るようにしている者もいる


「ちょっとどいて…」

タマモはドアを塞ぐCAに声をかけ中に入る


パニックになっている乗客達は、その隙に操縦席に向かおうとする


「さあ…、大人しくしなさい」

タマモは妖力を高めて周囲に幻術をかける


バタッ…

バタッ…


乗客やCA達はみんな虚ろな目になり、その場に倒れ込み静かになる

タマモはそのまま飛行機内部の全ての人間を黙らせた



タマモと同じく行動したシロは、機長と副機長を安全な場所に移動させる

操縦席は窓が割れており、風が物凄い為ヒーリングなど出来ない


「シロ、これを使え」

横島は文珠を数個投げ渡す

シロのヒーリングでは、重傷患者は治らないのだ


「わかったでござる!」

シロは2人の様子を調べて、文珠でヒーリングを始める


「わっ… 私も手伝います」

今日1日いろいろあって呆然としていたおキヌは我に返りシロを手伝う


「ちょっと横島! 勝手に指示出さないで! 何かあればどうするの!」

令子は自分を無視して行動を始めた横島達を睨みつける

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