新しき絆・2

バレンタインから約一週間後

この日が、横島にとって美神除霊事務所での最後の仕事となる事件が起きる


横島が事務所に入ると、令子とおキヌが珍しく機嫌がいい

2人共オシャレをして、どことなくソワソワしている


「おはようございます」

横島は軽く声をかけて、タマモの元に歩み寄る

「タマモ、今日は何があるんだ?」

横島は倉庫で、除霊道具の整理をしながらタマモに聞く


「テレビに出てるアイドルが来るんだって… 除霊を見学したいらしいわよ」

タマモは興味無い様子で横島に説明する


「アイドル…? 誰だ?」

「知らないわよ。 私興味無いし」

横島は相手を聞くがタマモは興味が無いらしい


横島とタマモは、今日の除霊に使いそうな道具を準備して応接室に戻る

横島は、令子達とは少し離れた場所に座り、タマモとシロが横島の近くに座る


最近はほとんどこの形である

横島達は令子に近づかないで、自分達で会話をしているのだ


「どーせなら、もーちょっといい男が来ればいいのに… 横島君とタメ年のガキじゃね~」

令子はそんなことを言いながらも、気合いの入ったドレスを着て笑顔だ


「美神さんには、西条さんが居るじゃないですか… そんなにオシャレしていんですか? 西条さんがヤキモチ妬きますよ?」

おキヌは、珍しく令子が機嫌がいいのが嬉しいようで、からかうように話しかける


「えっ… 別にそんなんじゃないわよ!」

令子は慌てて焦ったように否定するが

何をそんなに慌ててるのか、おキヌにはわからなかった


「そうだ! 横島さん聞いて下さいよ! 美神さん、バレンタインに西条さんと付き合ったそうですよ!」

おキヌは横島を驚かそうと思って、令子と西条が付き合い出したことを教える


「本当か?」

横島は少し驚きタマモに確認する


「ええ… そうらしいわよ」

タマモはあまり表情を変えずに答える


「そうなんだ~ いや~ 良かったっすね~」

横島は笑顔になり、珍しく自分から令子に話しかけた


「……あんたには関係無いわよ」

令子はムスッとして横島を睨む

令子は横島のまるで関係無いような反応が面白くない


(横島さん…)

おキヌも同じく横島の変化を確信していた

昔の横島なら荒れ狂うほど、騒いだのに…

あっさり流してしまった


「ねえ横島、今日は飛行機で遠くに行くらしいわよ。 なんか珍しい物食べさせてよ」

令子やおキヌの心情を悟ったタマモは、2人と横島を切り離すべく話を変える


「そっか~ いいぞ! 時間があれば名物でも食いに行こうな」

「先生! 肉が食いたいでござる!」

横島がタマモとシロに笑顔で話すと、シロは嬉しそうに叫ぶ


「わかった、わかった… 仕事が終わったらな」

横島はシロに苦笑いしながら答える


そんな和やかな横島とタマモとシロ


少し離れた場所では令子とおキヌが、複雑な表情で横島達を見つめる


(かなりショックみたいね…)

タマモは横目で、令子やおキヌの様子を見ている

(今まで薄々感じてた距離感を、突きつけたんだから仕方無いわね…)


そう…

今まで薄々感じていても認めなかった

横島と自分達の遠すぎる関係を改めて見せつけられたのだ
 
令子とおキヌは内心穏やかでは無い

令子は怒り、おキヌは悲しみ横島を見つめているのだ

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