新しき絆・2

食事の後、2人はバーで飲んで帰ろうとタクシーに乗り込む

事務所に着き、令子がタクシーから降りようとする瞬間

西条は令子の手を握ろうとする


しかし…

令子は無意識に逃げてしまう


「西条さん、ありがとう。 今日は楽しかったわ。 またいつでも誘ってね」

令子はそんな西条に気がつかないようで、笑顔で帰っていく


西条はタクシーから見える夜景を見ながら、考え込む

(やはり令子ちゃんは無意識に僕から逃げてる)

西条はバーで飲んでる時から、令子との距離感を図っていた

令子は意識してないが、西条が令子を抱き寄せようとすると逃げるのだ


(やはり横島君のように気を許してはくれないか… だが、形だけとは言え恋人だ… 後は時間の問題だ)

西条は理解している

令子が付き合うと言う言葉は言ったが、自分を愛してない事実に…

そして、横島と違い自分には距離を開けられていることに…


だが、形だけとは言え恋人だ

これからは誰にも遠慮なく令子との距離を縮めれる


今日はその一歩で十分であった

絶対に進めなかった兄の存在から、僅かだが変化をみせ始めたのだから


しかし西条は知らない

令子を受け止めるのが、どれだけ大変かを…

今の令子には、まだ横島と言う心の支えがあると言う現実を…


プライドの高い西条は、自分が令子を幸せに出来ると信じて疑わない

西条は自信に満ちた笑みを浮かべて帰っていく



一方その夜の横島と魔鈴は、夕食が終わり魔鈴は当然のように横島にお風呂を進める


「横島さん、お風呂が沸きましたよ」

魔鈴は横島の着替えとパジャマを、脱衣場に用意して横島を呼ぶ

クリスマスの頃から、たまに魔鈴の家に泊まっている横島の着替えは、魔鈴の家にも少しあった


横島は洗濯物を持ち帰ろうとするのだが、洗濯機もない横島のアパートである

コインランドリーを使うなら自分が洗濯するといい、魔鈴が洗濯して預かっていた


「ありがとうございます…」

横島は少し照れたように風呂に向かう

年末年始など、魔鈴の家に泊まって風呂に入るのは前からあったが、恋人になると何故か違う気分になる


横島は脱衣場にあるパジャマを見てふと思う

(今日も泊まっていいのだろうか… 修行もしたいし帰ろうかと思ってたんだが…)

横島はそんなことを考えながらもお風呂に入る

(うーん…、今更帰るのも変だよな~ と言うか、隠して修行してるの言わないと怒るかな?)

横島は湯船に浸かりながら考えていく


横島は現在も毎日ではないが、深夜に修行をしているし

休日は天狗と修行をしている

雪之丞は、暇があれば一緒に修行をしているから知っているが、魔鈴は知らない

横島はそれを話すべきか悩む


ルシオラとは、恋人らしい時間の持てなかった横島は、まともに女性と付き合ったことの無い

その為、恋人となった魔鈴との距離感にがわからなかった


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