新しき絆

その頃、西条は自宅で送られて来たバレンタインチョコを確認していた

「これは、亜美君に… こっちは春香君だね」


一つ一つ差出人を見て、誰がどれを送って来たか確認しているのだ


西条は、過去に横島にはチョコの数を気にしてないような態度をしていたが、実は毎年細かい数や送ってくれる人をチェックしている

プライドの高い西条は、細かな人間関係を気にしていた


そして送って来ない人物には、それとなく様子を見に行ったりしている

かつて魔鈴にプレイボーイと言われた西条は、女性には細かな気配りをよくしていた

もちろん、下心があればこそだが…


「あれ、魔鈴君のチョコが無いな… ここ数年はバレンタインが忙しいから送ってくれたんだが…」

西条はあまり魔鈴と会っては無かった

ごくたまに食事に行くが魔鈴が仕事中な為、あいさつ程度で終えている


西条自身、魔鈴に対して恋愛感情は無い

それに魔鈴は、遊ぶには怖い女だと判断していたので、うかつに手を出して無かったのだ

その理由として、魔鈴は魔女であり変わった趣味を持ち、少し融通の効かないとこがあった

その為、深入りを避けているのだ


しかし、突然チョコが来なくなると西条は理由が気になる


「僕は何か嫌われることをしたかな…?」

西条は心当たりを考えながら、Gメンに出勤する


Gメンに到着すると、美智恵は居ないが令子が待っていた


「おはよう西条さん」

令子は少し照れたような表情で、西条にチョコを渡す


この令子の行動には少し裏があった

西条には毎年チョコをあげていたが、今年は少し気合いを入れている


理由は、今朝横島の話をうるさく言った美智恵への当てつけだ

自分には横島よりも西条がふさわしい

そんな気持ちからである


横島はあくまでも丁稚であり、自分の所有物だ

恋人には西条のような人がいいと、暗に当てつけのつもりである


「ありがとう。 令子ちゃん」

西条はそんな令子の思惑を知らぬまま、笑顔で受け取る


「西条さんは相変わらずモテモテね…」

令子は西条のデスクを見て、少し怒りの表情を浮かべる

西条のデスクにはすでにチョコが何個も乗っているのだ


「アハハハ… 仕事柄、義理チョコをくれる人が多くてね」

西条はにこやかに笑って、慌てずに嘘をつく

女性と遊ぶことの多い西条は、嘘も慣れたものである


「本当かしら…? まあ、私のは結構本気だからね!」

令子は疑う目つきで西条を見た後、今年は違うとアピールする

西条は令子の言葉に驚き目を見開く


「どうしたんだい? 令子ちゃん!?」

西条はあまりの驚きにそんな言葉で聞いてしまう

本来なら西条はそんなことを聞かないで、来る者拒まず受け止めて遊ぶのだ


しかし、相手は本命の令子であり

今まではぐらかされて来た相手な為、ついそんな無粋なことを聞いていた


「別に理由は無いわよ。 私のチョコは迷惑なの?」

令子は一瞬理由を聞かれてムッとしたが、切り替えて笑顔で西条に問いかける


「いや、嬉しいよ。 ありがとう! さっそく今夜食事でもどうだい?」

西条は令子の変化に気が付いていた

(横島君と何かあったな… このチャンスは逃がさない)

西条は内心ほくそ笑む


「ええ…、じゃあ6時に迎えに来てね」

令子は笑顔で返事をする


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