新しき絆

「あなたを愛してるからです。 私はあなたに幸せになって欲しい。 そして、あなたがここまで愛するルシオラさんに会ってみたい」

魔鈴は先ほどまでとは違い、自分でも不思議なほど落ち着いていた

もう魔鈴に迷いも不安も無い

魔鈴はそれほどまでに横島を愛していた


横島は魔鈴の言葉が胸に、魂に響く

そして魔鈴の言葉がまるで、ルシオラと魔鈴の2人に言われてるように感じてしまう


「なんで…、俺にはそんな資格無いのに… 魔鈴さんもルシオラもなんで俺を…」

横島は呆然と呟く


「愛する人に幸せになって欲しい。 それだけです」

魔鈴は混乱する横島を優しく抱きしめる

魔鈴の温もりに横島は少しずつ冷静さを取り戻す


そして…

気がついてしまう


魔鈴に対する想いに…

自分で気付かないように封じていた愛情に…


「俺は……、ルシオラと魔鈴さんのどちらかなんて… 選べない」

横島は魔鈴を抱き締めたい気持ちを必死に抑えて、語っている


「選ぶ必要無いですよ。 私はルシオラさんを愛する横島さんが好きなんです。 今のままのあなたを愛してるんです」

魔鈴は横島を抱き締めたまま、耳元で囁く


「でも…」

横島は困惑しながらも何か言おうとするが、魔鈴が言葉を遮る

「横島さんが何と言おうが、私の気持ちは変わりませんよ」

魔鈴は笑顔で当然のように横島に語る


「俺はどうやって答えたらいいかわからない… 魔鈴さんもルシオラも両方……愛してるから」

横島は困惑しながらも、初めて自分の素直な気持ちを口にした


「横島さん!」

魔鈴はあまりの嬉しさに、たまらず横島に自分からキスをしてしまう


「…ん…」

横島は驚き目を見開くが…

すぐに魔鈴の体に手を回して強く抱きしめる


魔鈴は横島が求めたことに体が震えるほど、幸せを感じる

「………」

長いキスが終わり、2人はゆっくりと唇を離すが、抱き締めている手はそのまま


「横島さん、一つだけ私のワガママを聞いて下さい」

魔鈴の言葉に横島は静かに頷く


「もし、ルシオラさんを子供に転生させるなら…、私に産ませて下さい。 それだけは誰にも譲れません!」

魔鈴はそれだけは譲れなかった

自分以外の他人がルシオラを産むのだけは我慢が出来ない


ルシオラは別で、それ以外の女性には横島を絶対に渡したくは無い


魔鈴はルシオラに対して共感を持っていた

立場が違えば、きっと自分と彼女は全く同じことをする

そんな気がしていた


「こっ…子供って…」

横島はあまりに飛躍した話に顔が真っ赤になる


気持ちが高ぶって気がつかなかったが、魔鈴とキスを交わしたことも思い出している


「魔鈴さん、本当にいんですか?」

横島は再び魔鈴に同じ言葉を投げかける


「横島さん、今の一夫一妻の考え方は主にキリスト教の普及と共に広がった考えです。 世界には違う価値観が当然の国はたくさんあります。 私はキリスト教と相反する魔女ですし、ルシオラさんは魔族です。 一夫多妻な生き方でも違和感など無いですよ?」

魔鈴は決断に迷う横島に最後の一押しをする


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