その一

その日、横島はおせち料理を作る後ろ姿をじっと見つめていた


(あれから一週間か…… 夢にしてはリアルだし長いな……)

クリスマスイヴの朝に何故かルシオラが存在する世界に居た横島だが、実は大晦日のこの日まであの世界のままだったのだ

毎日夢が覚めないように願ってはいるが、さすがに一週間が過ぎると疑問が出てくるのだが……


「ん~、こんな感じかしら?」

初めて作るおせち料理を味見するルシオラは、ちょっと首を傾げたのち笑みを浮かべる


「ルッ……ルシオラーー!!」

先程の考え事していた人とは思えないほど、横島は興奮した様子で突然ルシオラに飛びかかった


「キャッ!? もう~、料理中はダメだって言ったでしょ!!」

そんな横島に一瞬驚くルシオラだが、慣れた感じであしらってしまう

どうやら横島は毎日同じ事をして飛びかかっているらしい


「ルシオラー!! 俺が嫌いなんか!?」

「だから、料理中はダメって言ってるだけでしょ!! 昨日だってあれだけシタんだから、ちょっとは我慢しなさい!」

ちょっとルシオラに避けられただけでこの世の終わりのような表情で叫ぶ横島に、ルシオラは若干呆れたように言い聞かせる


「もう終わりや~ 明日の朝に目が覚めたら、ルシオラが居なくなってるんや~」

「また、その話…… 何度も言ったでしょ。 夢でも幻術でもないって。 横島だって気のすむまで確認したじゃない」

叫んだ後は決まっていつも同じ事を言ってへこむ横島を、ルシオラは呆れたようになだめていく

最初こそ真剣に話を聞いたが、さすがに毎日同じ話をされると反応に困るようである


「でも……」

「わかったわ。 終わったら気の済むまで付き合うから、ちょっと待っててね」

なかなか機嫌が治らない横島に、ルシオラは後ろから抱きしめてそっとささやく

なんだかんだ言ってもルシオラは甘かった



「あの二人も変わらないね。 すぐに、私達の存在忘れるんだから」

リビングでゲームするパピリオを見ていたベスパは、二人の世界を作っている横島とルシオラを少し複雑そうに見つめている


「ベスパちゃんも混じって来たらいいんでちゅ。 昨日の夜みたいに……」

ゲームに熱中していたパピリオだが、一瞬ベスパを見てニヤリと意味深な笑みを浮かべた


「ゴホッゴホッ……えっ!? あれは、その……」

突然パピリオに言われた事にベスパは顔を真っ赤にして言い訳を初めていくが、パピリオの意味深な笑みは変わらないままである


「パピも混ざりたいでちゅ」

「パピリオには少し早いよ……」

ボソッと呟くパピリオに、ベスパは困った様子でどう話せばいいか悩んでいた



「ルシオラ……」

「ヨコシマ……」

一方横島とルシオラは、いつの間にか料理をそっちのけで二人の世界を加速させていた


この後どうなったかは……



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