その一

その日エミは地方での除霊を終えて、東京までバイクで帰っている最中だった


「ちっ! こんなとこで故障なんてツイてないワケ」

エミは愚痴をこぼしながら周囲を見渡すが、山奥の一本道なために森しか見えない

高速が混雑しているため近道しようして山越えの道を選んだのだが、運悪く故障してしまったようだ


「携帯も圏外な場所でどうしろっていうのよ」

かれこれ一時間半は民家どころか対向車も見てない山奥での故障に、さすがのエミも表情が引き攣っている

時間は午後3時を過ぎた頃で山の夕暮れは早く、このままでは最悪野宿かもしれない


「仕方ないわね」

愚痴っても答える相手も居ないエミは、仕方なくバイクを押しながら山道を進んでいく

しかし上り坂と下り坂が多い山道を女性がバイクを押して進むのは、さすがのエミでも無理だったようで僅か20分でヘトヘトになっていた

結局疲れて歩けなくなったエミはバイクに腰掛けて車が通るのを待つ事にするが、車は全く来ない


「今日はツイてないワケ」

ため息をはき空を見上げたエミは、偶然近くから立ちのぼる煙を見つけた


「まさか、こんな山奥に人が住んでるの?」

何かを燃やす煙を見つけたのだが、道路沿いには街灯も電線も無い山奥に人が住んでるのか少し不安になる


(まさか妖怪とかじゃないわよね)

あまりいい予感のしないエミだが、妖怪でも何でもいいから助けが欲しかった

仮に人を襲う妖怪が居ても自分の身を守るだけの力はある

それにもし人間ならとりあえず野宿は避けられると思ったエミは、警戒しつつ煙の元へ向かう

山道から更に獣道へと入っていくのだが、気をつけないと遭難しそうなほど人が通った跡がない


(ヤバいワケ。 山奥で車が通らないって事は、普通の人間じゃないわね)

幸い除霊道具を最低限持っていたエミは、いつ襲われても撃退できるように武装しながら慎重に進んでいく


「えっ……」

獣道が突然開けた場所に出たエミは、思わず我が目を疑ってしまう

そこは山に囲まれた僅かな土地にある畑だった


「本当に人が居るの?」

ほぼ間違いなく妖怪変化の類だと決め付けていたエミは、人が住んでるような古い民家を見つけて驚き言葉が出ない
 
 
「おたくは…… 横島!!」

ちょうど民家から出て来た青年を見て、エミは思わず叫んでいた


「あれ……? エミさんじゃないっすか!?」

民家から出て来た横島は、驚き叫んだエミに不思議そうに答える

何故エミが此処に居るのかわからないようだ


「15、6年ぶりかしら? おたく生きてたのね」

エミは思わず懐かしそうに横島に声をかける

そう、エミと横島が会うのは16年ぶりだったのだ

この時アシュタロス戦から17年が過ぎており、当時17歳だった横島は現在34歳で当時20歳だったエミは現在37である


それは誰も予想出来ない再会だった

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