その一

「うわっ!? メドーサ何したんだ?」

怪しげな呪文が聞こえた横島は怯えながらメドーサを見る



「ウフフ… 言っただろ? 女を抱けない体にするって…」

意味ありげな笑顔で楽しそうに見つめるメドーサに、横島はどうしていいかわからない


「別に何にも変化はないぞ?」

横島は手足を動かしてみるが特に変化は無いので首を傾げた


「今はね。 ただしあんたが欲情しても体は反応しないよ。 あたしの魔力であんたの煩悩を封印したからね」

楽しそうに見るメドーサの笑みが横島には悪魔に見えた


「まっ… まさか… イ〇ポになってもうたのか~!?」

夜中に近所に聞こえそうなほど大声で叫ぶ横島を見て、メドーサはケラケラ笑っている


「ようやくわかったかい? あたしの気が向いたら解除したげるよ」

ショックで固まる横島を放置して、メドーサは横島が買ってきた弁当を食べ始めた


「メドーサ! 俺が悪かった! 頼むから戻してくれ! 二度と押し倒さないからっ」

事の重大さを悟った横島は、必死にメドーサにしがみついて頼み込むが
メドーサは意味ありげな笑顔をしたまま考え込んだ


「うん、一つゲームをしよう。 明日1日あたしの恋人にしてやるよ。 その間にお前があたしを惚れさせたら元に戻してやるよ」

「へっ!? なんだそりゃ… むっ 無理だー! 自慢じゃねえがナンパですら成功したことないねにーー!!」

メドーサの意外な提案を横島は絶叫しながら否定した

横島はデートなどしたことがないから、どうしていいかわからないのだ


「あんたはこのあたしに勝ったんだ。 それに相応しいプライドを持った男になりな! そうすりゃ簡単だよ」

それとなくメドーサは方法を示すが、プライドなど欠片も無い横島は理解出来なく

すっかりうなだれて、この世の終わりのような顔をしていた


「あたしの話聞いてるかい?」

メドーサが横島の顔を覗き込むが、全く聞いてない


「あたしはわかったんだよ。 あたしのプライドを取り戻すには、お前の価値を上げる方が早いってね。 せいぜい頑張りな」


この数日横島の真相にプライドを打ち砕かれたメドーサ

それを取り戻すのに横島を殺すのではなく、プライドを持たせようなど前の彼女なら考えもしなかっただろう


横島と会って以来メドーサもどこか変わったようである


一方自分の最も大事な煩悩を封印された横島は、そんなメドーサの変化に気付くはずもなく真っ白に燃え尽きていた


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