その一

西条が危機に陥っている頃、横島は朝から真剣な眼差しだった


「忠夫君……、好きです」

軽やかなメロディーに乗せての告白に、横島は思わずガッツポーズで喜びを表す


「どうだ! 凄いだろ~」

テンション高く自慢する横島にメドーサの冷めた視線が突き刺さる


「それの何が面白いんだい?」

冷たいと言うか呆れた感じのメドーサ、彼女はギャルゲーに燃える横島を全く理解出来なかった


「仕方ないやんか~ 現実じゃモテないんや! ゲームくらいモテてもバチは当たらんだろ!」

休日の朝から妙なゲームを始めた横島にメドーサは呆れているが、横島は涙ながらに訴える

元々魔族のメドーサと横島では、互いに理解出来ない部分もあるようだ

最も横島が変わってるだけとも言えるが……


「あんたに金を持たせて悩んだ末に買って来たのが、中古のゲームだとは。 本当にわからない奴だね」

朝から疲れた表情のメドーサだが、そもそもは前日の夕方に遡る



「横島、あんたに百万渡すから何か面白いモノ買っておいで」

学校から帰ってダラけていた横島に、突然メドーサが妙な事を言い出したのが始まりだった


「どっ……、どうしたんだよ急に!? はっ!! まさかイタリアンマフィアは……」

「妙な想像するのはお止め! 暇だからちょっとした遊びだよ」

突然現金を渡された横島はまた妙な想像をするが、メドーサに突っ込まれて現実に戻される


「ちょっとした遊びって額じゃないんだが……」

メドーサとしてはただの暇潰しのつもりだが、横島は突然現金で百万を渡されても困ってしまう


「金なんて使わなきゃ意味ないだろ? だいたいあんた、9億のうちいくら使った? 男なら百万くらいパッと使って来な!」

根本的にお金に対しての価値観が違う二人、魔族のメドーサはお金にあまり執着がないようだった


「いや…… でもな~」

「はっきりしない男だね! さっさと行って来な!」

煮え切らない態度の横島を、メドーサは半ば強引に外に出す

そんなメドーサに振り回される形で横島が買って来た物の一つが、昔の中古のゲームソフトだったのだ



「いや~、いざお金を使えって言われてもなかなか思いつかなくてな~」

さて時は戻って、呆れた様子のメドーサに横島は軽い調子で笑ってごまかす

横島としてもいろいろ考えたのだが、貧乏性が抜けない横島は結局何も買えなかったのだ


「何か欲しい物とかなかったのかね~」

「いや、あるにはあるんだが……」

呆れた様子のメドーサに横島は欲しい物自体はあると言う


「じゃあ、今度こそそれを買っといで!」

メドーサが渡した数個の札束を受けとった横島は、そのままメドーサに渡していた


「いや、だから買って来なって!」

お金を返されたと思ったメドーサは少し強い口調で欲しい物を買えと言うが、横島は言いにくそうにモゴモゴするだけである


「はっきりしな!」

「欲しいのは買えないんや~ メドーサ! お前とやりた……」

はっきりしろと言うメドーサに横島ははっきり言うが、途中でメドーサに殴られてしまう


「女を抱きたかったら口説き方を覚えろって、何回言えばわかるんだい!」

横島が気付かないほど僅かに顔を明らめたメドーサは、照れ隠しのように怒鳴る


「無理なんや~ 俺にメドーサを口説くのなんて無理なんや~」

一方メドーサの気持ちなど全く気が付いてない横島は、相変わらず駄々をこねるばかりだった


この日も二人は相変わらずである


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