その一

同じ日、メドーサのマンションを雪之丞が訪れていた


「なあ横島、なんか金になる話は無いか?」

どうやら雪之丞は金欠になって横島を頼って来たらしい


「金になる話って言われてもな~ そうだ! 美神さんのとこなら……」

「そこだけは行かねえよ! 俺はお前と違って、あんな女に使われるのはゴメンだ!」

金になる話と言われてもそんなアテがある訳が無い横島は、自分が辞めた令子の事務所の名前を出すが雪之丞に即座に拒否されてしまう


「お前ならピッタリだと思うけどな~ 危ない仕事が多いし、魔族やら妖怪やらと良く戦うし…」

バトルジャンキーな雪之丞なら喜ぶのではと安易に言う横島だが、雪之丞はかなり不満そうだ


「横島…、俺は真剣に相談してるんだぜ?」

雪之丞の中でも令子の事務所だけは有り得ないようである


「お前の方こそ相談する相手間違ってるぞ?」

今だに貧乏が体に染み付いた横島は、お金のアテなどあるはずがない

と言うか何故雪之丞が自分に相談するかが不思議だった


「仕方ないだろ、俺の知り合いで一番まともな暮らししてるのはお前なんだよ。 ピートはあんなだし……」

雪之丞はため息をはく

実は横島のところに来る前に唐巣の教会にも行ったが、それは酷い状態だったのだ

唐巣は体調を崩し寝込んでおり、ピートが一人でボランティアの除霊をしていた

そんなピートに金になる仕事はあるかと聞けるはずも無く、雪之丞は横島の元に来たらしい


「神父まだ寝込んでたのか…、また飯の差し入れに行かないと危ないかな」

唐巣とピートの生活を想像すると、横島は涙が出るほど悲しくなる

貧乏で空腹の辛さは誰よりも理解しており、他人事には思えないようだ


「なあ、メドーサ。 なんかないかな?」

金になる話が無く落ち込む雪之丞に、横島はたまらずメドーサになんとかして貰おうとしていた


「雪之丞の能力じゃ使えないんだよねぇ……」

一方、メドーサはそろそろ自分に話が来ると感じていたようだ

最近の横島は基本的に、困ったらメドーサになんでも任せている

その為、メドーサは先程からの話を聞いていたらしい


「使えないってどう言う意味なんだ?」

「戦うしか能が無い割に力も中途半端なんだよ。 もう少し器用なら金になる話はあるんだけどね」

使えないと言われた雪之丞は若干不満そうにメドーサに意味を尋ねるが、その答えは厳しいものだった


「雪之丞は十分強いだろ?」

「人間としてはね。 ただ実戦向きじゃないんだよ。 一対一で格闘技でもやるんなら別たけど、経験不足で機転が利かないからね。 裏の仕事ならアテがあるけどお前じゃ無理だよ」

不満そうな雪之丞に変わり横島が詳しく聞くが、結局戦うしか出来ない雪之丞に出来る仕事は少ないと言う事だった

やはりメドーサは横島以外にはあまり遠慮が無いようだ

まあ雪之丞の弱点をいちいち教えてる辺りは、以前とは変わっては優しさも見えるが


「じゃあどうすりゃいいんだよ」

一方ダメなとこをはっきり言われた雪之丞は、少しふて腐れてしまった


「まともに生きたかったら、どっかのGSに弟子入りするんだね。 魔装術は強力だけど除霊には向かないんだよ」

いちいち言わなければわからない雪之丞に、メドーサは呆れた視線を向けつつ答えている

問題は、今だに裏と表を中途半端に生きてる雪之丞に問題があるようだ


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