その一

その後、横島は最低限の光熱費を支払い、メドーサは冷凍保存の可能な料理を10日分ほと作った


「じゃあ神父、料理は冷凍しておいたみたいなんで、ちゃんと毎日食って下さいよ。 餓死なんかされたら寝覚めが悪いっすからね」

「ああ、ありがとう横島君とメドーサ君」

横島は半分笑い話として餓死などと言ったが、唐巣は思わず苦笑いしてしまう

実際唐巣が倒れて誰かに助けてもらうのが、年に数回あるのだから笑えないようだ

まあ横島としてはそれほど唐巣と関係は無いのだが、知ってしまった以上ほっとくことも出来ない性格なので、基本的に横島もお人よしなのだろう


「済まなかったね。 立て替えて貰った分は出来るだけ早く返すよ」

「別に急がなくていいんで、ちゃんと飯食って下さいよ」


そんな会話の後、横島とメドーサは帰って行く

以前と雰囲気が変わった横島に唐巣は驚き見送っていたが、隣のメドーサと違和感無く歩く姿に何故か納得していた



一方教会からの帰り道でメドーサは、呆れたように唐巣を思い出している


「あんな神父も珍しいね。 アタシはたくさんの宗教の神父や神官を見て来たけど、あそこまでお人よしな神父は初めてだよ」

「普通の神父って違うのか?」

「ああ、宗教家って言うのは神の代理人みたいなもんだからね。 下手な王侯貴族より権力がある分、腐った連中は多いんだよ」

唐巣には呆れるだけで好意的なメドーサだが、他の神父などの話にはあからさまな嫌悪感を露にしていた

長い時を神魔の両方で生きてきたメドーサなだけに、大勢の宗教家の汚さに嫌気がさしてるようにも見える


「まあ、いくら人格者だからと言っても、あの神父は行き過ぎだよ。 全く…、美神令子と足して割るとちょうどいいんだけどね」

「無理だろ~ どっちも変わり者だからな~」

メドーサの話に思わず笑ってしまい、唐巣と令子が変わり者と言う横島だが、メドーサは横島も人の事を言えないと思っていた


(アタシなんかと一緒に居る時点で、あんたも十分変わり者だよ…)

クスッと笑ったメドーサは、何故か楽しそうに歩いていく



その頃、横島とメドーサが去った教会では悪夢が再来していた


「あれ? 先生顔色良くなったわね… 今日は流石に無理かと思ってたけど、大丈夫そうね!」

最近恒例となっている令子の襲来に、唐巣は笑顔のまま固まってしまう

まあ令子としても最近唐巣の顔色が悪いので、今日は心配して様子を見に来ただけだったのだが、予想外に顔色がいいので今日も酒を飲みに連れ出して行く


「先生も案外タフよね~ 私の酒に毎日付き合えるのは先生だけだわ!」

ご機嫌な令子に半ば無理矢理連れて行かれる唐巣の姿は、まるで強制連行される罪人のようにも見えていた


(神よ………)

基本的に嫌とは言えない唐巣は、今日も令子の愚痴プラス朝まで飲み続ける運命だった

そしてせっかく横島とメドーサのおかげで回復しかけた体調も、また悪化していくことになる



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