その一

エミは横島とメドーサから離れて商品を眺めるが、視線は二人に向いていた


(恋人にしか見えないワケ。 あのメドーサがあんなに幸せそうな表情をするなんて…)

楽しそうに横島の服を選ぶメドーサの姿は、エミに改めて変わった現実を突き付けた


(あれも一種の除霊かしらね…?)

結果的にメドーサの脅威は無くなった現実に、エミはあんな結末もあるのだと改めて感じていた


(まっ… 私には関係ないワケ)

あまりに楽しそうな二人に、少し面白くないエミは無言で店を去って行く



「とりあえず、これとこれを試着してみな」

メドーサは服を選びながら横島に次々に試着をさせて行った


「おう…」

高級な店の雰囲気に飲まれ気味の横島は、少しオドオドしながら試着する


「げっ…!? シャツが5万もするよ。  今のシャツは500円なのに…」

試着しながらふと値段を見た横島は、思わず今のシャツの値段を声に出して言ってしまう


「横島、頼むから恥をかかせないでくれ… ここの店員は日本語わかるんだからね!!」

そんな横島に恥ずかしそうに顔を赤らめたメドーサが小声で文句をつける


「いや~、悪い悪い… 同じ布でなんでこんなに値段が違うのかと思ったらさ~」

笑ってあっけらかんとする横島に、メドーサは諦めたようで服を選びに戻った

この程度はいつものことだから、メドーサもさすがに慣れて来たようである


そんな二人は横島の服を選んだ後メドーサの服も買うらしく、今度はメドーサが試着していた


「どうだい?」

少し恥ずかしそうに試着したドレスを見せるメドーサだが、横島の視線は胸元や腰など相変わらずの場所に集まる


「おー!! これはいい! 大きく開いた胸元がたまらん! それに腰の辺りも最高だ!!」

「お前は…… そう言う事を聞いてるんじゃないんだよ! 服の感想を聞いてるんだよ! 全くもう…」

興奮気味にギラギラした熱い視線を送る横島に、メドーサは顔を赤らめて突っ込む

しかし、そんなメドーサの女性らしい姿が横島をより興奮させていることに、メドーサは気が付いて無かった


「いや、美女は何着ても似合うな~ 次はこっちはどうだ?」

結局自分の服を選ぶより遥かに楽しい横島は、メドーサに次々にいろんな服を試着させて行った

初めは恥ずかしがったりしたメドーサだが、なんだかんだ言っても褒められることが嬉しいらしく素直に試着していく

結局、二人はかなりの金額を使って大量の服を買ったようだ


そして店内ではいろいろ目立っていた横島とメドーサだが、店員はバカップルくらいにしか思ってなく何の問題も無かったようである



その後横島とメドーサは、数日ハワイを観光して帰国した

海外旅行が初めての横島はもちろん楽しんだのは当然だが、長い年月を生きたはずのメドーサもまた今までに無いくらい楽しんでいた

メドーサにとって今回が、神も魔も人も関係無くただ馬鹿やって楽しんだ初めての旅行だったのだ

もちろん横島はそんなこと知るよしも無いが…


そんなことを別にしても、二人にとって忘れられない旅行になったのは確かだろう



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