その一

「いったいどうなってるのワケ……?」

信じられないような事態に、エミは混乱気味に目を白黒させる


「とりあえず部屋に行くよ。 お前も知りたきゃ来ればいい」

混乱するエミを見て軽くため息をはくメドーサだが、周りにはたくさんの人がおりあまり注目を集めたくない

結局、部屋に連れて行き横島に説明させようと考えていた


「ちょっと! 大丈夫なの!?」

メドーサを信用出来ないエミは少し引き攣った顔で横島に問い掛ける


「大丈夫っすよ。 結構いい人っすから」

魔族を人と呼び軽い表情で言い切る横島に、エミは半信半疑で着いていく



部屋に到着した横島は、メドーサと暮らしてることや令子の事務所を辞めたことを軽い調子で説明していくが、エミはあまりの非常識な横島の行動にフリーズしたまま聞いていた


「本当はおかしなことじゃないのさ。 元々魔族は自由気ままに生きるはずなのに、最近はデタントだの何だの理由を付けて自由が無い。 元々神族のアタシは特に自由気ままな生活が好きなだけさ」

いつまでも半信半疑のエミに、メドーサは仕方なく事情を説明し始める


「せっかく死んだことになってるのに騒ぐつもりは無いし、あんたに迷惑をかけるつもりも無いよ」

メドーサのそんな言葉を聞き、エミはしばし無言で考え込んでいた


「まあ、私に害が無いならいいワケ。 別にはぐれ魔族が珍しい訳でも無いし…」

しばらく横島とメドーサの様子を探るように見つめていたエミだが、横島も操られてる様子も無いしわざわざ大人しくなったメドーサを敵に回す必要も無い

珍しい事ではあるが魔族全てが破壊と殺戮を好む者でないことをエミは理解しているため、自分には関係無い事として考えを切り替えていた


「エミさんだってピートにちょっかい出してるんだから、似たようなもんじゃないっすか」

「ピートとメドーサじゃ、魔族としての格が違い過ぎるの! それに殺し合った相手と同棲するなんて普通はしないワケ!」

立場的にエミも似たようなもんだと言う横島だが、エミは少しムッとしたように反論する


「そうすか?」

しかしエミの言う意味を理解しない横島は、不思議そうに首を傾げた


「ピートって誰だい?」

「前に会ったろ? バンパイアハーフの奴だよ」

エミと横島の会話からピートが魔族だと思ったメドーサは尋ねるが、横島に説明されるとニヤリと笑みを浮かべる

「ああいうのが趣味な訳か…」

「別にいいでしょ!? 横島と暮らしてるあんたに言われたくないワケ」

からかうようなメドーサに、エミは少しムッとした表情で反論する


「小娘にはわからないだろうねぇ~」

しかしメドーサはエミの言葉に怒ることも無く、大人の余裕のような笑みを浮かべる

そんな二人の姿に、いつもは大人に見えるエミもメドーサと比べると子供のように横島には見えていた


「まあまあ、みんな仲良くしましょうよ。 美人同士は仲良くって言うでしょ?」

二人の言い争いは特に険悪でも無かったのだが、一応仲裁に入る横島

まあ彼の場合は険悪ならば逃げ出すのだろうが…


「そういえば令子のとこ辞めたのよね? 帰ったらタップリ笑いに行かなきゃね~」

横島の顔を見て令子を思い出したエミは、横島に逃げられた令子をタップリ笑ってやろうと燃えていた


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