その一

「いや~、すまん! 責められると条件反射で怖くなっちまうんだよな~」

冷静になった横島は苦笑いしながら言い訳をする

一緒に暮らしてから日にちが経過しているが、メドーサが折檻したことは無い

ツッコミのような事はあるが、それは常識の範囲内である

横島としてはメドーサが暴力を振るわないのは理解しているが、責められると体に染み付いた恐怖が蘇ってくるのだ


「まあいいさ。 さっさとホテルに行くよ」

すでに横島のリアクションになれたメドーサは、気持ちを切り替えて歩き出す



さて何故二人が突然ハワイに来たかと言えば、横島の高校が三連休なのが理由である

特に予定も無いため、メドーサが横島にどこか行きたい場所を聞いたら、海に行きたいと言ったのだ

横島としては近場の海に行きたかったのだが、メドーサが選んだのはハワイだった

まあメドーサの感覚としては、近場に旅行に行くような感覚でハワイに来ていただけなのだが…



そんな二人が到着したのは、横島が唖然とするような高級なホテルである


「メドーサ! 大丈夫なのか?」

貧乏性な横島はつい不安になりメドーサに聞いてしまう


「何がだい? 金はあるだろ。 それに最高級のスイートルームに泊まる訳じゃないよ」

メドーサはそう話すと、慣れた様子でフロントに向かう


ドン!


そんな時少しぼうっとしていた横島は、誰かにぶつかってしまったようだ


「あっ、すいません」

「気をつけるワケ」


条件反射的に謝った横島に帰って来た声は、よく聞き慣れた声だった


「あれ? エミさん?」

「おたくは横島!? なんでここにいるのよ!」

互いに顔を見た二人は驚きの声を上げる

特にエミは横島が来るはずの無い場所なだけに、信じられないように横島を見つめる


「いや~、ちょっと旅行に……」

少し困ったように話す横島は、キョロキョロとメドーサを探す

二人が会えば、どうなるか予想も出来ないので会わせたくない


「旅行ってことは令子も一緒なのね! せっかくバカンスに来たのに会いたくないわ」

横島が一人で来れるはずがないと思うエミは、令子が横島を連れて来たと思ったようだ


「横島、部屋に行くよ」

しかし、そんな時に限ってフロントで受付を終えたメドーサが戻って来てしまう


「メ…メドーサ!!」

メドーサの顔を見たエミは、顔を真っ青にして後ろに下がる

そして精霊石を手にして、なんとか逃げようと考えていた


「お前は……」

一方メドーサは、名前を呼ばれた時点でエミがGSなのは気が付いている

しかしエミの事はGS試験や元始風水盤の事件で少し見てるが、印象が薄く名前まで知らないようだった


「じゃあエミさん、いい休日を…」

突然の事態に横島は困ってしまい、何もなかったかのように挨拶してメドーサとその場を離れようとした


「ちょ…ちょ…ちょっと待つワケ!! なんでメドーサと横島が??」

しかしエミはそんな事を許す訳が無い


「アハハッ。 メドーサのそっくりさんです! 偶然知り合いまして…」

今度は笑ってごまかそうとする横島だが、誰が聞いても嘘だとバレてしまうだろう


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