その一

それから一週間後

横島はバイトを辞めて以来、ゆっくりした時間を過ごしていた

お金には不自由しなくなったが、それほど生活が変わる訳でもなく、本やゲームなどをたまに買うような普通の高校生らしい生活を送っている



一方、横島の去った美神事務所だが…

こちらも表面上は以前と何の変わりも無いままである

元々は令子一人で十分な事務所のため、横島が居なくなったからと言って表面上は困ることも無い


そして令子とおキヌの関係だが、こちらも特に険悪になることは無かった

おキヌは横島への対応に不満があるようだが、だからと言って令子は嫌いになれないし、基本的に辞める辞めないは横島の自由なため令子を責めることも出来ない

令子に至ってはイライラや不満や淋しさなど複雑な感情を心に秘めてはいるが、表に出せる性格ではないため特に変わりは無いのだ


『ただのバイトが辞めただけ』

そう頭を切り替えて日々を変わらず生きていく



「ハワイや! ハワイ!」

カシャ!カシャ!カシャ!

ホノルルに到着するなり、嬉しそうに写真を撮りまくっているのは横島である

写真の半分は景色だが、半分は外人の美女なのは言わなくてもわかるだろう


「全く…、恥ずかしいから騒ぐのはお止め!」

一昔前の日本人のように、カメラを片手に騒ぐ横島をメドーサは困ったように見つめる


「いや~ バイト以外で外国に来れるとは思わなかった~ まるで盆と正月とクリスマスが一気に来た気分だ!」

相変わらず意味不明な事を言う横島だが、メドーサもいい加減なれてきたため軽く流す


「フフ… そういえば香港で会ったね」

外国と言う言葉にメドーサは、少し懐かしそうに横島を見つめる

横島と一緒の自分をあの時の自分が見たらどう思うだろうか?

ふとそう考えたら思わず笑ってしまった


「あん時は大変だったな~ 神父は石にされるし、美神さんは捕まるし… 俺、よく生きてたな……」

一方香港の事件を思い出した横島は、テンションが急降下する

改めて考えると、生き残ったのが不思議なくらいだった


「そうだね… あの時はあんたなんか眼中に無かったよ。 アタシも人を見る目が無いねぇ」

「俺はメドーサの胸は忘れなかったぞ! そんだけデカイ胸は珍しいからな~ それが俺の物になるなんて……」

香港の時を思い出して懐かしそうに語るメドーサと横島

しかし横島の思い出の中心はメドーサの胸だった


「何があんたの物だって?」

ニッコリと意味ありげな笑みを浮かべるメドーサは、ゆっくりと横島に迫っていく


「いや… あの… その…」

ダラダラと冷や汗を流して後ろに下がっていく横島だが、メドーサから逃げられるはずは無い


「ヒー! 折檻はイヤー!!」

突然恐怖で叫ぶ横島を無理矢理引っ張って、メドーサは恥ずかしそうにその場所から逃げていく


「このバカ! 折檻なんかしないから、突然騒ぐのはお止め!」

場所を変えて一息ついたメドーサは、横島に呆れたように説教する

メドーサ自身は一度も横島に暴力を振るったことは無い

それにも関わらずあの反応は、正直不愉快であった


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