その一

その後、遠慮すること無くご飯を食べた雪之丞は横島と酒を飲み始めた


「それであんたは今GSやってるのかい?」

少し離れた場所に座り一人で飲んでいたメドーサだが、元弟子の雪之丞がどうしてるか少し気になったらしい


「うん…、まあGSっぽいことしてるかな」

珍しく歯切れが悪く少し複雑な表情を浮かべる雪之丞に、メドーサは不思議そうな顔をする


「こいつまだGS免許無いんだよ。 だから助っ人なんかしてるだけなんだ」

「ああ、そんなことかい」

ニヤニヤした横島が説明すると、メドーサはつまらなそうに雪之丞を見た


「面倒な事は苦手なんだよ。 修行しながらたまに金稼ぐくらいが気楽でいい」

言い訳するように話し出す雪之丞だが、食事に困るところを見ると半分意地を張っているようだ


「相変わらずだねぇ…」

融通の利かない性格の雪之丞に、呆れ気味のメドーサ

もう少し上手く立ち回れば人生が変わるだろうと思う


「とにかく飲もうぜ! この文字が読めない酒美味いな~」

雪之丞は気分を変えるように酒瓶を持ち一気飲みする
 
 

「あんた達に酒の価値を理解しろとは言わないけど、安い酒じゃないんだよ」

まるで安い酒でも飲むように乱暴に飲む雪之丞に、メドーサはため息をはく

ケチケチする気は無いが、味わって飲んでほしいとは思う


「そうなのか?」

メドーサの言葉に驚く横島は、もったいなそうに雪之丞を見る

どうやら雪之丞に飲ませるのは、もったいないと思ったようだ


「いちいち覚えてないけど、一本数万する酒しか買ってないよ」

酒の値段を聞いた途端、雪之丞の顔が真っ青になる


「あの… 俺、金無いんだが…」

恐る恐るメドーサを見る雪之丞、後で酒の代金請求されるのではと恐れていたのだ


「あんたに代金請求するくらいなら飲ませないよ!」

「アハハッ メドーサ意外と優しいから大丈夫だって!」

ぶっきらぼうに言うメドーサを見て横島は笑ってしまう

いつもながら言葉は悪いが、行動は優しいのだ

まあメドーサ相手に恐れないでそこまで気が付くのは、横島しか居ないだろうが…


「何言ってんだい! このバカ!!」

横島の言葉に顔を赤くしたメドーサはそっぽを向く

そして雪之丞はそんな二人を不思議そうに見つめていた


「横島…、俺は今日ほどお前に勝てないと思った日は無いぜ」

あのメドーサと恋人のようにしている横島に、雪之丞は改めて驚いていた

昔の冷酷なメドーサを知るだけに、雪之丞には信じられないようだ


「こいつはバカなだけだよ。 こいつだけなんだ、アタシを魔族として見なかったのは……」

そっぽを向いたままつぶやくメドーサ

しかしその言葉はらしくないほど柔らかく、優しさすら感じる言葉だった


「いや、だって美人だし… 美人とは仲良くってのが俺のモットーなんだ」

真顔で当然のように言い切る横島に、メドーサと雪之丞は一斉に笑ってしまう


「やっぱり横島だな」

「そうだねぇ」

呆れたような感心したような雪之丞とメドーサ

二人はいつの間にか自然に接していた


そしてかつての師弟も敵味方も関係無く、その日は深夜まで三人は酒を飲んでいく


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