その一

一方、学校を後にした横島はメドーサに電話をして夕食の買い物に来ていた

時間はちょうど夕方のタイムサービスの時間で、横島は主婦に混じって特売品を買っている

学生服の横島が主婦に混じって特売品を買う姿は目立っているが、貧乏が体に染み付いた横島は安く買える喜びでいっぱいで気がつかない


「うーん、卵と鶏肉が安かったな。 今夜は親子丼にしてもらおう」

電話して買い物が無いか聞いた横島にメドーサが答えたのは、好きな物を買ってくるように言っただけであった

結果横島は特売品を中心に夕食を考えたらしい


「おい! 横島!」

そんな帰宅途中の横島は、突然背後から声をかけられる


「雪之丞じゃねぇか!? 久しぶりだな~ 妙神山以来か?」

背後を振り返った横島が驚きながら返事をすると、雪之丞は横島の持つスーパーの袋に視線を移す


「なんだ、また飯たかりに来たのか?」

視線に気が付き少し呆れた横島だが、雪之丞はもちろん気にする様子は無い


「ちょうど近くに来たんで、今夜は泊めて貰おうと思ってな…」

ニヤリと笑みを浮かべる雪之丞は、当然のように横島のアパートをあてにしていた


「まあ、お前ならいいか… ただし、喧嘩するなよ」

ため息を吐き歩く横島だが、雪之丞は言葉の意味がわからない


「お前ペットでも飼ったのか?」

「説明が面倒だから、来ればわかるよ。 ただし何があっても喧嘩するなよ」

不思議そうな雪之丞に、横島は説明することなく歩いてゆく



「ここって……」

メドーサのマンションに来た雪之丞は、あまりに立派なマンションに驚きを隠せない

というか、何故横島がここに来たかがわからなかった

まさか住んでるとは思いもしないようである


「ただいま~ 飯たかりに雪之丞が来たけどいいよな?」

普通に豪華な部屋に入る横島の後ろを、雪之丞は信じられない様子で着いて行く


「雪之丞だって!?」

リビングのソファーに横になっていたメドーサは、驚き起き上がった


「メッ…メドーサ!! お前なんで此処に!?」

とっさに後ろに下がった雪之丞は、魔装術を展開しようとする


「だから喧嘩するなって言っただろ? ここメドーサの家なんだから…」

横島の言葉にぽかーんとする雪之丞と、ため息混じりのメドーサ

部屋は微妙な空気になっていた



「全く…、事前に説明しろよな! 殺されるかと思ったじゃねぇか!!」

その後、横島と雪之丞が帰宅してから一時間

雪之丞は簡単な説明を受けてメドーサの作った夕食を食べていたが、事前に説明しなかった横島に文句を付けている


「お前もアタシを裏切っておいて、良くアタシの作る料理を食う気になるね」

遠慮無くガツガツと食べながら会話する雪之丞を見て、少し呆れた表情のメドーサ

横島もそうだが雪之丞も馬鹿だったのだと、今更気が付いていた

まさか雪之丞があのまま部屋に上がり込んで、ご飯を食べるとは思わなかったようだ


「いや… あれはその…」

さすがに少し怖いのかビクッとして、横島に助けて欲しそうな視線を送る


「もう敵じゃないんだし、細かいことはいいじゃねぇか」

相変わらず軽い調子の横島にメドーサは疲れを感じるが、結果的に納得している自分に苦笑いを浮かべてしまう
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