その一

それから三日が経過していた

日に日に顔色が良くなり身なりが小綺麗になる横島に、クラスメート達は様々な噂をしている

強盗でお金を手に入れたと言う噂や、変な宗教に騙されてるだけだと言う噂など本当に様々な噂をしたが、何故か彼女が出来たと言う噂は全く無かった


そんな横島だが、本人は何も言わない

自慢したい気持ちはあるのだが、バレンタインの時のように吊るし上げにされることはわかりきっているからだ



そして令子だが、未だに横島に会うことが出来ないでいた

別に横島が逃げてる訳では無いのだが、横島の元アパートから学校までの何処かでまちぶせする令子と、メドーサのマンションから通う横島では道が全く逆なのだ

本当は学校に会いに行くなりすれば簡単なのだが、令子のプライドが許さない

どうしても偶然街で出会ったと言う状況にしたいようである



そしてこの日も横島はピートや愛子達と昼食にしていた

毎日きちんと弁当を食べる横島に疑惑の視線を向けるクラスメートを、横島は無視しつつ弁当を食べていく


「横島さんが毎日学校来るなんて珍しいですね… バイトは行かないんですか?」

空気が読めないピートは、ふと疑問を横島に投げかけていた


「最近放課後に、知り合いの仕事の手伝いしてるんだよ。 だからバイト行ってないや。 時給255円じゃいい加減嫌だしな~」

少し考えた横島だが、当たり障りの無い嘘でごまかす

いい加減クラスメートの疑惑の視線がうざかったのだ


「あら、横島君らしくないわね。 あんなに美神さんにこだわってたのに…」

驚き横島を見つめる愛子だが、それはクラスメートも同じでいつの間にか全員聞き耳を立てている


「まあ確かにあの体は惜しいが、性格がな~ 良く考えたら美人って街にたくさん居るんだよね。 最近なんか美神さんに冷めたんだ」

ぽつりぽつりと話していく横島だが、クラスメートは横島らしい話に納得していた

令子が美人なのは誰もが認めるが、横島の話を聞くと近づきたいとは思わない

良く考えてみると誰よりも女好きな横島が、いつまでもやれない女に関わる方が不思議であった


そして横島の言葉は最近の本音である

メドーサと一緒に居るうちに、令子に対する執着心や感情がどんどん冷めていた

数百年生きてきたメドーサと、子供がそのまま大きくなったような令子では内面的魅力が違い過ぎるのだ


見た目はメドーサの方が年上に見えるが、人間で言えば30代くらいだし姿を自由に変えれると言っていた

その時点で令子の利点だった若さも消えている


それに大人の女としての色気が全く違っていた

性格や内面の違いが原因だろうが、メドーサはかなり女性らしいのだ

言葉は相変わらずぶっきらぼうだが、そのギャップもまた横島は気に入っている


結果的にお金も不自由してないため、今の横島はバイトに行く気が全く無いのだ


「じゃあ、GSは辞めるの?」

「う~ん… 将来はわからないけど、とりあえず美神さんのとこで仕事する気は無いな。 俺の夢は美人の嫁さんを手に入れて退廃的な人生を送ることだし、正直危険で怖い仕事はやりたくないもんな」

令子への執着心が薄れた現在、GSに関してもやる気も興味も無かった


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