その一

さて楽に金を稼げるといい横島を連れ出したメドーサ

彼女が向かったのは横島の良く知る場所だった


「アイヤー、珍しい組み合わせアルネ。 令子ちゃんとこのボウズとミスズちゃんが知り合いだとは思わなかったアル」

メドーサの体を見つめ鼻の下を伸ばしていたのは厄珍である

そしてこの店は厄珍堂だった


厄珍のミスズと言う言葉に、一瞬不思議そうな表情でメドーサを見つめる横島だが、彼女の目を見ると言葉がでない

黙ってろと言う無言の圧力があったのだ


「アタシが誰と知り合いだろうと関係ないだろ。 今日はこれを買っとくれ」

メドーサは無造作に先程横島から預かった文珠を厄珍の前に置いた


「アイヤー! 今日は文珠アルカ!! いつもながらミスズちゃんは凄いの持ってくるアルネー」

厄珍は文珠に手を伸ばし、珍しそうに眺める


「一つ3億でいいよ。 今三つある。 買うか?」

無表情で淡々と話すメドーサの胸に、厄珍はそっと手を伸ばそうとする


「一つ5億にするよ?」

ギロッと睨むメドーサに、厄珍はたまらず冷や汗を流して渇いた笑いを浮かべた


「相変わらずツレナイアルネー でも3億はちょっと高いアル」

オドオドしながらも値段の交渉に入ろうとする厄珍だが、メドーサは文珠を取り上げ帰ろうとする


「わかったアル。 三つで9億でイイネ。 その変わりまた珍しい物持って来て欲しいアル」

交渉の余地も無いメドーサの態度に、厄珍はため息をはき返事をした


「金はいつもの口座に振込みな」

「わかったアル。 それでボウズとはどういう関係ネ?」

文珠を渡しすぐに帰ろうとするメドーサに、厄珍は興味津々な様子で尋ねる

さっきからそれが知りたくてウズウズしているのは、メドーサには丸わかりであった


「面白い男だからね。 気に入っただけさ」

ニヤリと笑みを浮かべるメドーサに、厄珍は驚き信じられないようだ


「ま…ま…ま…まさか、こんなボウズなんかのどこがいいネ!?」

「余計な事は聞かない。 それが契約のはずだよ。 それとも…… 覚悟はあるのかい?」

驚き横島につかみ掛かろうとする厄珍を、メドーサは鋭い眼差しで睨む



「メドーサ、厄珍と知り合いだったんだな…」

厄珍堂からの帰り道横島は、メドーサの空気がようやく普通に戻ったのでホッとして話し掛ける


「別に知り合いじゃないさ。 魔界の品物やアイテムを売ってただけだよ」

簡単に説明するメドーサだが、横島の表情は微妙に引き攣っている

どうやら犯罪かどうか気になるようだ


「別に危ない物は売ってないよ。 ただ魔界の品物は手に入りにくいからね。 マニアには高く売れるのさ」

「そっか… でも文珠ってあんなに高く売れるんだな…」

ヤバい物で無いことにホッとする横島だが、文珠が予想以上に高く売れたことに驚きが隠せない


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