その一

放課後、横島はひとまずアパートに帰ることにしていた

何故かメドーサのマンションに住むことになった横島だが、さすがに着替えなどは必要なのである


ガチャリ


いつものようにドアを開けると、そこにはなにも無かった


「あれ…?」

標札を確認するが、そこは紛れも無く横島の部屋だ


「どっ…泥棒に入られたー!!」

その場で絶叫する横島だが、ふと我に帰ると不思議である


「ちょっと待てよ。 なんでゴミまで無くなってるんだ?」

よく考えればこの部屋に盗まれる物など無い

リサイクルショップでも買い取らないような古い電化製品に、使い古しの布団くらいしかないのだ

後は横島のお宝はあるが、あれも新しい物は無くわざわざ盗む物には思えない


「いったいどうなってんだ…」

しばらく呆然としていた横島だが、このままここに居ても仕方ないためメドーサのマンションに帰っていく



「メドーサ大変だ!! アッ、アパートの物が消えちまった!」

部屋に上がり込むなり、リビングで暇そうにテレビを見てるメドーサに慌てて事実を話すが反応は薄い


「今朝言わなかったかい? あんたの荷物はこの部屋に運んだよ。 空き部屋に全部運んだから好きに使いな」

メドーサの言葉を聞くなり慌てて言われた部屋へ見に行くと、ダンボール数個に電化製品などが置いてある


「良かった… 俺のお宝がある」

最初に確認したのがお宝なところを見ると、一番大切なのはお宝だったようだ


「別にあれこれうるさく言うつもりは無いけど、部屋の掃除は業者に頼んでるからね。 変な本を出しっぱなしにするんじゃないよ」

横島がお宝を抱きしめる姿を、いつの間にか見ていたメドーサは呆れ顔で最低限の事を告げる


「あはは……」

メドーサの呆れ顔に、横島はすぐにお宝をダンボールに入れ笑ってごまかす

零点のテストを見つかった子供のように、冷や汗を流しながら渇いた笑いを浮かべる横島であった


「あっ、俺バイトに行って来るわ」

ホッとした横島は、生活費も必要な為バイトに向かおうと部屋を出る


「バイトって美神令子のとこかい? なら辞めときな。 あんな危険なことして時給255円じゃ割に合わないよ」

「えっ… だけど生活が……」

正論を言うメドーサに横島は困ったように小さく生活が出来なくなると告げた


「金なら持っと楽に稼げるよ」

ニヤリと意味深な笑みを浮かべるメドーサに、横島は恐る恐るその理由を聞く


「あんたは文珠使いなんだ。 やり方次第で金なんて楽に稼げるよ」

「いや…、俺犯罪はちょっと……」

意味深な笑みを浮かべるメドーサを見て、勝手に犯罪と決め付ける横島


「あんたバカだね… 誰が犯罪をするなんて言ったんだい。 そんな面倒なことしなくても簡単なんだよ。 まあアタシに任せな」

勝手に犯罪と決め付けられたメドーサは微妙にムカついた表情をするが、犯罪でないことを告げてニヤリとした笑みに戻る

元々魔族のメドーサにとって犯罪は悪いことと言う感覚は無い

しかし、人間界で生きる以上必要以上に目立つのが面倒なことはよく理解していた

せっかく一度死んだことになってるのに、また騒ぎ立てて目立つつもりは無いようだ


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