その一

次の朝、アパートの横島の部屋ではブスッとした不機嫌そうな表情の女性が、一人で座っている


「横島のヤツー、無断外泊とは生意気な!!」

ぶつぶつと呪詛を唱えるように愚痴をこぼす姿は、怪しいと言う以外は言いようが無い

しかも疲れた表情でアパートのドアを睨むその姿は、まるでストーカーであった



何故こんなことになったかと言えば昨夜にまで遡る

深夜12時までデジャブーランドでボガートの侵入原因を調べていた令子と西条だが、結局見つからなかったのだ

西条は装備を換えて明日もう一度来るからと、デジャブーランド関係者を説得してなんとか終わりにしていた

理由としては装備だが、本当は不機嫌で八つ当たりの嵐だった令子から一刻も早く逃げたかったのは誰にも言わない秘密である

深夜令子と別れた西条は、よほど辛かったらしく生きてる幸せを感謝していた


その後令子は、横島をシバきたい一心で深夜にも関わらず横島の部屋へ怒鳴り込んでいくのだが、肝心の横島が不在であった


「本当に汚い部屋ね」

イライラしながら部屋を見渡す令子だが、ふと横島の万年寝床で目が止まった

枕元には何故かタバコの吸い殻があり、口紅が付いているので女性の物だとわかる


「まさか…」

怒りでワナワナと震える令子

さすがに経験が無いとはいえ子供ではないので、枕元にある吸い殻の意味は理解出来る


「よーこーしーまー!!」

怒りでぶちギレる令子は、横島をシバき倒そうとそのまま待ち続け朝を迎えていた



その頃横島は、昨日と同じようにメドーサと一緒に眠っていた


「うーん… なんかくすぐったいね…」

胸元が何かくすぐったく感じたメドーサが目を覚ますと

なんと、横島がメドーサの胸に顔を埋めて眠っているではないか


幸せそうに眠る横島の姿に、メドーサは一瞬恥ずかしさから殴ってやろうと拳を振り上げるが…

そのまま横島を抱きしめてしまう


「見なかったことにしてやるよ」

決して他人には見せないような優しい笑みを浮かべたメドーサは、そのまま二度寝してしまう

この数日でメドーサはかなり変わっていた


それから一時間後、横島はようやく目を覚ます


「なんか暗いな。 しかもこの柔らかさと暖かさは…」

横向きに抱き合うような型で眠っていた横島とメドーサ

横島の顔はメドーサの胸で挟まれてるため視界が暗いのだ


「まっ… まさか…」

横島は顔面蒼白になり冷や汗をダラダラ流す

こんな事を見つかったらどうなるかわからない

ゆっくり逃げだそうと動く横島だが、メドーサの腕があり逃げられない


「起きたのかい? じゃあアタシは朝食を作るかね」

少し面倒そうに起き出したメドーサは、そんな横島を気にする訳でもなく寝室を後にする


「あれ…? なんで殴られないんだ?」

すっかり殴られなれてる横島

普段なら殴られそうな展開にも関わらず、平然とするメドーサにどうしていいかわからず固まっていた


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