その一

(そう言えばこいつはバイトだって言ってたね)

考えてるのか考えてないのか、わからない横島を見てメドーサは考え込む


(もしかして、美神令子にも原因があるのかね)

いろいろ問題はあるが、基本的にはお人よしな横島である

あの悪どい美神令子にいいように利用されてるのでは…

メドーサがそんなことを考えて少し目を離した隙に、隣に居るはずの横島は居なかった


「お姉さ~ん 僕とお茶しませんか~」

なんと横島は、条件反射のようにすれ違う女性に声をかけている


「やめんか! ナンパするんじゃないよ!!」

怒りの表情のメドーサが横島をズルズルと引きずってゆく


「ごめん、ごめん… つい条件反射でな」

笑いながらごまかす横島をメドーサはギロリと睨む


「どうやら元の体に戻りたく無いようだね…」

黒い笑みを浮かべるメドーサに、横島はハッとした表情をして全身から冷や汗が溢れ出す


「あんた… まさか忘れてたなんて言わないよね?」

呆れたようにメドーサが問い掛けると、横島はギクッとわかりやすい反応を示してしまう
 
 
「いや~ 美味しい物をいっぱい食べたら幸せになってしまってな……」

冷や汗を流しながら、横島は笑ってごまかそうとしていた

結局横島は、メドーサが自分とデートするはずなどないと疑いつつも、楽しんで嫌なことは忘れていたのである


(こいつに危機感と言う言葉は無いのかい?)

呆れたようにジトッと見つめるメドーサ

そんな相変わらずの二人だが、デートは続いてゆく



「おうー! デジャブーランドだー!!」

次にメドーサと横島が訪れたのは、デジャブーランドであった

これも横島のリクエストである

デートならデジャブーランドだろうと言う安易な考えからではあるが、メドーサは特に否定もせずに来ていた


「俺はやったぞー!」

デジャブーランドの入口で叫ぶ横島は非常に目立っている

横島にとって、デートでデジャブーランドに来ると言うのは一種の夢らしい


「おやめ! 周りに笑われてるよ!!」

バコン!と一撃殴ったメドーサは恥ずかしそうに横島を引っ張って歩いていく



そしてその頃、偶然にもデジャブーランドを訪れていた者達が居た


「またここなのね…」

「ああ、毎日たくさんの人が集まるからね。 それだけ災いも集まりやすいんだろう」

それは令子と西条の二人であった

例によって関係各所から圧力があり、霊的事件の解決の為訪れていたのだった


「またボガート?」

「そうみたいだよ。 どうやら何処からかやって来てるらしい」

面倒くさそうな令子と、やる気のある西条は関係者用の入口から中に入っていく



一方横島とメドーサは、普通にデジャブーランドを楽しんでいた


「乗り物に乗れるなんて幸せだ~」

感動の涙を流す横島をメドーサは不思議そうに見つめる


「相変わらずあんたの言うことは良くわからないね。 ここに来て乗り物に乗るのは普通だろう?」

「いや… 前に一度だけ来たことあるが、乗り物のチケットが買えなくてな…」

暗く落ち込む横島の話にメドーサはため息をつく


(こいつは普通に生きたこと無いのかね)

そんな調子で横島とメドーサはジェットコースターのような物に乗ってゆく


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