その一

その日、学校とバイトを休んだ横島はメドーサと並んで街を歩いていた


「メドーサ~ 何処行くんだ?」

少し前を歩くメドーサを見ながら、横島はお腹が空いているようで少し元気が無い

ちなみに一日デートすることになったが、横島はもちろんお金などないので全てメドーサに任せるつもりである


「普通は男が何処に行くか決めるんじゃないのかい?」

情けない顔をしている横島をギロリと睨むメドーサ

だが、苦笑いしかしない横島にため息をはき再び歩き出した


「黙って着いといで…」

そんなメドーサが言葉少なく横島を連れて行ったのは、某百貨店の紳士服売り場であった


「メドーサ? 誰かに服でもプレゼントするのか? 自慢じないが俺にファッションの相談しようとしても無駄だぞ!」

どうやら横島はメドーサが誰かのプレゼントを選ぶ為に、自分を付き合わせるのだと思ったようだ


「誰があんたに相談するか! 今日はあんたの服を選びに来たんだよ!」

自慢じゃないがと言いつつ、胸を張ってファッションの相談が無駄だと言い切る横島にメドーサは頭を悩ませる
 
 
(まずは見た目からだね… プライド云々の前に、まともな生活を経験させないとどうしようもないよ)

頭の中でグチグチと考えるメドーサだが、何故かその表情はうっすら笑みが浮かんでいた

これはこれで結構楽しんでるようである


「メドーサ、俺は服を買うような金は無いぞ?」

何故メドーサが自分の服を選びに来たのか全く理解してない横島は、不思議そうに首を傾げるが

ひとまずお金が無いのだけははっきり伝えていた


「そんなことは言われなくてもわかってるよ! ほらとりあえずこれを着てみな」

自分が選んだ服を試着させるメドーサは、横島が試着している間少し考えこむ

(魔族のあたしの方が人間らしい生活してるだなんて、どんな親なんだろうね)


よくよく考えてみるとメドーサは不思議であった

美神令子も非常識だが、横島の生活の方も負けず劣らず非常識だ

いったいどんな親なんだろう…


メドーサがそんなことを考えてる間に、試着をした横島が現れた

カジュアルな感じのこざっぱりした横島の姿を、メドーサはしばらく見つめ考え込む
 
「うーん… あんまり似合わないね。 まあいいか… とりあえずその服買ってやるから今日はそれを着な!」

慣れない高級な服に困惑気味な横島はメドーサの後を着いてゆく


「なあ、メドーサ? 今日は何しに行くんだ?」

少し怯えた様子の横島が恐る恐るメドーサに尋ねる


イタリアンマフィアは殺す相手に贈り物をすると言う

横島は少し前にピートから聞いたそんな話を思い出していた


(俺は殺されるんだろうか… せめて死体になる時くらいはまともな服を着せてやろうと……」

「ほう~ あたしとはデートするより殺し合う方がいいのかい? ならその望み叶えてやろうか?」


「うわっ!? メドーサ! お前心も読めるんかー! ってか、本当にデートなのか? 殺す前の最後の思い出とかじゃなくて??」


突然メドーサに話かけられて混乱する横島は、どうやら全て声に出てたことに気が付いてないらしい


「全部声に出てたよ。 だいたいあたしと殺し合うつもりは無いって言い出したのはお前だろ? 何で服の一着買ったくらいで殺す話になるんだよ…」

横島の意味不明な話にメドーサは疲れた表情を見せる


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