その一

横島は気が付いていなかった
魔鈴がなぜ下着姿で一緒に寝ていたのかを……


普通は好きでもない男とそんなことするはずはないのだが……


こうして横島のクリスマスは終わった


それから年末年始は、横島は魔鈴の店でバイトをしながら除霊も手伝ったりして頑張っていた


一緒に大掃除したり、正月は初詣行ったりして、横島と魔鈴は端から見たら恋人にしか見えなかった。

魔鈴の店の客はみんな横島が魔鈴の恋人だと思っていた

そして
横島と魔鈴が付き合った!
と噂が流れ始めた


そして
横島も魔鈴から目が離せなくなり、気が付けば魔鈴を見ていた


しかし
横島は魔鈴に告白はしなかった
横島にとって魔鈴は、絶対守りたい一番大切な人だが
横島は自分が人を好きになる資格なんてないと、思っているのでそれ以上求めなかった



月日が流れ
1月中旬
美神事務所の人々が帰ってくる頃になった


魔鈴と横島は二人とも、もうすぐ一緒に仕事が出来なくなる。
それを寂しく思っていた


「そろそろ横島さんのバイトも終わりですね…」

魔鈴は悲しそうに話した


「そうですね… でもこれからも時間が出来たら手伝いに来ますよ。 お金はいらないんで、ご飯を一緒に食べさせて下さい。」


横島も魔鈴との関わりを減らしたくなかった
魔鈴と一緒にご飯が食べれる
それが本当に嬉しかった


「じゃあ、晩御飯は毎日食べに来て下さいね。 朝や昼は時間のある時でいいので…」

魔鈴は笑顔になり言った


「はい、ありがとうございます」


横島も笑顔になり二人見つめ合った


2日後
横島と魔鈴は某デパートで買い物をしていた

二人は腕を組んで仲良く何かを選んでいた


そんな姿を偶然発見した人達がいた


「令子 あれ横島君と魔鈴さんじゃない?」

美智恵は令子を見て話した


「まさか~ 横島クンが……」

しかし令子の言葉は途中で止まった


そこには
仲良く腕を組んで幸せそうな笑顔をした横島と魔鈴がいた


令子は言葉が出なかった

怒りや嫉妬もあったが
それ以上に横島の笑顔に言葉を失った


横島のそんな笑顔はルシオラが死んで以来見たことなかった。

横島は普段は前のようにおちゃらけているが、無理しているのは令子も知っていた。


あの笑顔は紛れもなくルシオラみ向いていた笑顔と同じだった……

あの笑顔が向いている相手が自分ではない。

それが悔しくてたまらなかった

だが
ルシオラを失った後の横島の嘆き悲しみを思い出すと
何も言えなくなる


「ママ行きましょう」

令子は横島達とは反対側へ歩く

「いいの令子?」

美智恵は静かに聞いた


「別に私に関係ないわ…」

そう呟いて歩いて行った



数日後
横島は1ヶ月ぶりに美神事務所に行った。

おキヌやシロは笑顔で横島と話し
タマモも言葉は少ないが嬉しそうだった

ただ令子は特に何もなかったように平然としていた


それから二週間
横島はまた除霊に学校に忙しい日々を送っていた

魔鈴とは毎日会ってご飯を共にしているが
横島の中では魔鈴に対する想いが膨らんでいった


一方魔鈴も
横島の為にご飯を用意して毎日待っていた。 時間が遅くても横島は必ず来てくれたから…

魔鈴も横島ともっと会いたい…

気持ちは同じだった


ある日
横島は美神に話した
「美神さん… 俺、事務所辞めたいんですが…」


令子は冷静に横島を見て

「わかったわ。 今週で辞めていいわよ。 GS免許も用意しておくわ。」


横島はあまりの呆気なさに拍子抜けしたが、頭を深く下げて言った


「今までありがとうございました。」


「いい横島クン、 あなたは何処に行っても私の弟子なのよ。 それを忘れないでね これからも頑張って」


そう話して
美神は笑顔をみせた


後日話を知った
オキヌやシロやタマモといろいろ大変だったが何とか納得してもらった



そして
美神事務所で最後の仕事を終えた日
横島は魔鈴を誘って、夕方の東京タワーに来ていた。


「横島さん、私が来てもいいのですか? ここは…」


魔鈴はそこが
横島とルシオラの大切な場所だと知っていた為、戸惑っていた


「今日は魔鈴さんとルシオラに話があるんですよ」

横島は静かに微笑んだ
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