その一
『プロポーズ?』
いつからだろう彼とこんな関係になったのは……
五つも年下の子を相手に私は夢中になっている
隣でぐっすり眠る彼を見ていると、私は彼の全てが欲しくてたまらない気持ちになっていく
そんな私にはライバルが多い
しかし幸いなことに私以外のライバルは全て互いに牽制し合い、彼に抱かれてるのは多分私だけだろう
彼はとても臆病で決して自分からは気持ちを伝えないし、何度も抱いている私ですら自分からは欲しいとは言えない
私と結ばれた時も私から彼を求めた訳だし……
今だに好きの一言も言えない彼がたまらなく愛しくてならない
そんな彼が私を求める合図は簡単、閉店5分前に客として来るのだ
昨夜は彼の18才の誕生日だったので、彼は上司や同僚に祝ってもらったらしい
その後珍しく深夜に私の家に来て泊まっている
出来れば私もお祝いしたかったのに……
「あら、何かしら?」
異界の夜明け前、窓から差し込む赤い月に照らされて何かの紙が床に落ちている
彼が服を脱ぎ散らかした辺りに……
私は彼を起こさないようにそっとベッドから抜け出し、その紙を拾って中を見てしまう
それは彼の名前だけ書かれた『婚姻届』だった
「お別れなんですね」
きっと彼が憧れた職場の上司か優しい同僚に渡すつもりなのだろうと思うと、私は胸の奥の痛みと込み上げて来る恐怖に倒れそうになる
失意でベッドに戻った私は、そのまま眠る彼を無理矢理求めてしまう
今日は危険日だから昨夜は気をつけてもらったのに、私は生のままの彼を求めてしまった
「気にしないで下さい。 もし出来ても私一人で育てます」
寝込みを襲われた彼は妊娠を心配してオロオロしているが、私はどうしても別れる前に彼の形見が欲しかったのだ
そんな私に彼は突然目の色を変えて脱ぎ散らかした服を漁って何かを探してる
「結婚して下さい!」
私はその瞬間、頭が真っ白になっていた
突然目の前で土下座した彼が手に持っていたのは、先程の婚姻届と小さな指輪だったのだから……
「えっ……」
「俺みたいなモテないダメ男じゃ、やっぱりダメっすか」
思考が止まった私に、彼は何を勘違いしたか拒否されたと思いうなだれてしまう
「はっはい、私で良ければ喜んで!!」
落ち込む彼に私は慌てて返事を返す
彼はとても臆病だしモテるのだ
この機会を逃せば私にチャンスなどない
「本当にいいんっすか!?」
「本当の本当にいいんっすか!? 苦労するかもしれないですしきっと後悔しますよ!」
自分でプロポーズしておきながら、彼は何度も同じ確認をして来る
そんなとても変わった旦那様に私は思わず笑ってしまう
「嫌いな人に抱かれたりしませんよ」
深夜の薄暗い部屋で裸のまま床に正座してプロポーズをするなんて、彼以外に居ないだろう
そしてそんな彼に付き合って、何度も返事を返す女も私だけだと思う
「でもね、プロポーズをお受けする前に一言足りないと思いませんか? 私は貴方の気持ちを一度も聞いてません」
私は欲深い女だと自覚している
夢にまで見た彼の隣を獲得しても、どうしても欲しい一言を 求めてしまうのだから
「あっ……あっ……愛してます」
「私も愛してますよ。 忠夫さん、これからはめぐみと呼び捨てにして下さい」
真っ赤な顔で奮えながらその言葉を紡ぐ彼を、私は抱きしめ高ぶる気持ちを彼にぶつけていく
そのうち彼の上司が同僚を従えて私の店に乗り込んで来るだろうが、私は今度こそ負けるつもりなどない
それに今の私はどんなに罵られようとも、笑って答える自信があるほど幸せだった
ごめんなさいね、美神さん
いつからだろう彼とこんな関係になったのは……
五つも年下の子を相手に私は夢中になっている
隣でぐっすり眠る彼を見ていると、私は彼の全てが欲しくてたまらない気持ちになっていく
そんな私にはライバルが多い
しかし幸いなことに私以外のライバルは全て互いに牽制し合い、彼に抱かれてるのは多分私だけだろう
彼はとても臆病で決して自分からは気持ちを伝えないし、何度も抱いている私ですら自分からは欲しいとは言えない
私と結ばれた時も私から彼を求めた訳だし……
今だに好きの一言も言えない彼がたまらなく愛しくてならない
そんな彼が私を求める合図は簡単、閉店5分前に客として来るのだ
昨夜は彼の18才の誕生日だったので、彼は上司や同僚に祝ってもらったらしい
その後珍しく深夜に私の家に来て泊まっている
出来れば私もお祝いしたかったのに……
「あら、何かしら?」
異界の夜明け前、窓から差し込む赤い月に照らされて何かの紙が床に落ちている
彼が服を脱ぎ散らかした辺りに……
私は彼を起こさないようにそっとベッドから抜け出し、その紙を拾って中を見てしまう
それは彼の名前だけ書かれた『婚姻届』だった
「お別れなんですね」
きっと彼が憧れた職場の上司か優しい同僚に渡すつもりなのだろうと思うと、私は胸の奥の痛みと込み上げて来る恐怖に倒れそうになる
失意でベッドに戻った私は、そのまま眠る彼を無理矢理求めてしまう
今日は危険日だから昨夜は気をつけてもらったのに、私は生のままの彼を求めてしまった
「気にしないで下さい。 もし出来ても私一人で育てます」
寝込みを襲われた彼は妊娠を心配してオロオロしているが、私はどうしても別れる前に彼の形見が欲しかったのだ
そんな私に彼は突然目の色を変えて脱ぎ散らかした服を漁って何かを探してる
「結婚して下さい!」
私はその瞬間、頭が真っ白になっていた
突然目の前で土下座した彼が手に持っていたのは、先程の婚姻届と小さな指輪だったのだから……
「えっ……」
「俺みたいなモテないダメ男じゃ、やっぱりダメっすか」
思考が止まった私に、彼は何を勘違いしたか拒否されたと思いうなだれてしまう
「はっはい、私で良ければ喜んで!!」
落ち込む彼に私は慌てて返事を返す
彼はとても臆病だしモテるのだ
この機会を逃せば私にチャンスなどない
「本当にいいんっすか!?」
「本当の本当にいいんっすか!? 苦労するかもしれないですしきっと後悔しますよ!」
自分でプロポーズしておきながら、彼は何度も同じ確認をして来る
そんなとても変わった旦那様に私は思わず笑ってしまう
「嫌いな人に抱かれたりしませんよ」
深夜の薄暗い部屋で裸のまま床に正座してプロポーズをするなんて、彼以外に居ないだろう
そしてそんな彼に付き合って、何度も返事を返す女も私だけだと思う
「でもね、プロポーズをお受けする前に一言足りないと思いませんか? 私は貴方の気持ちを一度も聞いてません」
私は欲深い女だと自覚している
夢にまで見た彼の隣を獲得しても、どうしても欲しい一言を 求めてしまうのだから
「あっ……あっ……愛してます」
「私も愛してますよ。 忠夫さん、これからはめぐみと呼び捨てにして下さい」
真っ赤な顔で奮えながらその言葉を紡ぐ彼を、私は抱きしめ高ぶる気持ちを彼にぶつけていく
そのうち彼の上司が同僚を従えて私の店に乗り込んで来るだろうが、私は今度こそ負けるつもりなどない
それに今の私はどんなに罵られようとも、笑って答える自信があるほど幸せだった
ごめんなさいね、美神さん
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