その一

 
 
第三話・真夏の夢…


その日は暑い夏の日…


強い日差しが街に降り注いでいた


魔鈴はその日、自宅で新しい魔法薬の実験をしていた


「魔鈴ちゃん、今度は何を作ってるんだにゃ?」

黒猫は怪しげな薬を作ってる魔鈴に聞いた


「今度の薬は凄いわよ~ 若返りの薬よ!」

魔鈴は自信満々で嬉しそうに説明した


「若返りの薬なんて、売って大丈夫かにゃ?」

黒猫は首をひねった


「みんな欲しがるわよ。 誰だって若いままで居たいですもの…」


魔鈴はどうやら若返りの薬を売るようだ…

黒猫はそんな薬を売ればロクな事が無いと思ったが…

言えなかった


「さて… 完成よ! 後はこれを瓶詰めにして売るだけね」

魔鈴は薬を入れる瓶を探しに部屋を後にした……


「試してみたいニャ~ ちょっと拝借…」

黒猫は悪い笑みを浮かべて、若返りの薬を近くにあったティーカップに少し分けた


黒猫が若返りの薬を舐めようとしたら…

魔鈴が戻ってきた


「ふー 重かったわ… こういう時は男手が欲しいわね」


魔鈴はため息をついて、椅子に座った


魔鈴の目の前にはティーカップがあり、少し紅茶が残っているように見えた…


だがそれは…

黒猫が若返りの薬を分けた物だった


黒猫は知らないふりをして、魔鈴を見ていた


魔鈴は喉の渇きを覚えて、ティーカップに手を伸ばした…


「あっ… それは……」

黒猫が声を出した時にはもう遅かった…


ゴックン…


魔鈴は若返りの薬を飲んでいた


ピカーー!!


魔鈴は光と共に若返った…

いや小さくなった…

見た目6~7才の女の子になっていた


ついでに服まで小さくなっており、魔女の子供みたいだった……


「あれ… 私… なんで小さくなってるの…?」

魔鈴は状況が理解出来なかった…


黒猫は静かに歩いて逃げている


「黒猫さん… あなたの仕業ね…?」

チビ魔鈴はニッコリと笑顔で黒猫を呼び止めた


「あの… ちょっと試してみようかと…」

黒猫は魔鈴の笑顔に全身冷や汗だらけだった


「あの薬は飲んだら最後… 元には戻れないのよ! 私が小さくなったら解毒剤も作れないじゃない!!」


魔鈴は笑顔のまま黒猫を追い詰めていく…

「ごめんだニャ~!!」

黒猫は外に逃げ出していった


「待ちなさーい!」

チビ魔鈴は必死に追いかけるが

猫には追いつけない


体が小さくなりすぎた為、霊能力も出せなくなっており

解毒剤はおろか、魔法のほうきも扱えなかった


「もう… 私… これからどうやって生きていけば……」

チビ魔鈴は黒猫を見失って途方に暮れていた


チビ魔鈴は公園のベンチに座り、うなだれていた


世界でただ一人の魔女の自分の薬は誰にも扱えない


自分はこれからどうなるのか…


魔鈴は自然と涙が溢れていた


「……ヒック……ヒック……ヒック……」

チビ魔鈴は静かに泣いていた…


10/12ページ
スキ