その一
一方小竜姫と別れた横島はドキドキと胸が痛くなるほど鼓動が高鳴る中、何故こんなことになったのか分からぬまま漠然と今回の一件を考えていた。
思えば一昨日から様子が変だった小竜姫に横島も度々疑問は感じている。
(何がなんだかさっぱり分からんな)
何故小竜姫は自分にGS試験を勧めたのか、そして異常なほど優しかった訳は何なのか横島は知りたかった。
例えそれが何かの作戦で自分が一人騙されていただけだとしても、横島はそれはそれでいいと思っている。
(あの小竜姫様が泣くなんてな……)
それにあの瞬間小竜姫が見せた涙が横島はどうしても忘れられない。
「……なあ、俺がさっきの奴と試合して生き残れるか?」
「試合に勝つことは問題ない。 無傷で勝たせてやろう。 ただ試合に勝てば確実にメドーサに目を付けられる。 相手がメドーサの場合は私も守りきれるか分からん。 お前にその覚悟があるか?」
もう一度小竜姫に笑って欲しい。
結局横島が考えることが出来たのはその程度であり、それが全てだった。
多少の怪我くらいは我慢しても何か小竜姫の役に立ちたいと思った横島は心眼に試合に出た場合を尋ねるが、問題は試合の勝敗ではないのである。
まあ心眼も小竜姫の本心までは分からないが、対メドーサの最前線に横島を立たせるのが怖くなったのかもしれないと彼は考えていた。
加えていかに小竜姫の竜気を一部を使える心眼とてメドーサを相手に横島を守りきる自信はないし、何より心眼が小竜姫の竜気を使うには小竜姫が竜気を送れる環境に居ないと使えないとの技術的な問題も実はあった。
契約のラインは距離で途切れることはないが、現実的に竜気を送るには強力な結界に阻まれたり距離が離れ過ぎると竜気を送れなくなる。
具体的に美神事務所程度の結界ならば問題はないが、妙神山の結界と東京からの距離は確実に竜気を送れない環境であった。
心眼は小竜姫がGS試験後に竜気を使えない横島がメドーサに狙われる危険性を考え、GS試験を止めるように告げたのだと考えたようである。
「……わかんねえ。 でもこのまま逃げるのは抵抗がある」
そんな心眼が語ったのは横島の今後に関わる重大な問題だった。
しかし横島は覚悟なんてないし、分からないとしか言えないが……。
「出れば小竜姫様の役に立てるんだな?」
「それは確実だ。 少なくとも連中の一人のGS免許を阻止出来るのだからな」
覚悟と言われてしばらく考えていた横島だが、二回戦の開始時間が迫っていた。
「もういいや。 考えても俺には分からん」
小竜姫の涙と笑顔、それに約束のご褒美と今後の危険。
それらが複雑に絡み合い悩んだ横島は最終的に考えるのを放棄して試合場に歩き出す。
何度このまま棄権しようかと考えたか分からない。
今この瞬間もこのまま逃げようかと本気で悩んでもいる。
それでも横島は自分の意思で試合場に向かって歩いていた。
せめてもう一度だけ小竜姫に笑って欲しい。
ただそれだけの為に……。
思えば一昨日から様子が変だった小竜姫に横島も度々疑問は感じている。
(何がなんだかさっぱり分からんな)
何故小竜姫は自分にGS試験を勧めたのか、そして異常なほど優しかった訳は何なのか横島は知りたかった。
例えそれが何かの作戦で自分が一人騙されていただけだとしても、横島はそれはそれでいいと思っている。
(あの小竜姫様が泣くなんてな……)
それにあの瞬間小竜姫が見せた涙が横島はどうしても忘れられない。
「……なあ、俺がさっきの奴と試合して生き残れるか?」
「試合に勝つことは問題ない。 無傷で勝たせてやろう。 ただ試合に勝てば確実にメドーサに目を付けられる。 相手がメドーサの場合は私も守りきれるか分からん。 お前にその覚悟があるか?」
もう一度小竜姫に笑って欲しい。
結局横島が考えることが出来たのはその程度であり、それが全てだった。
多少の怪我くらいは我慢しても何か小竜姫の役に立ちたいと思った横島は心眼に試合に出た場合を尋ねるが、問題は試合の勝敗ではないのである。
まあ心眼も小竜姫の本心までは分からないが、対メドーサの最前線に横島を立たせるのが怖くなったのかもしれないと彼は考えていた。
加えていかに小竜姫の竜気を一部を使える心眼とてメドーサを相手に横島を守りきる自信はないし、何より心眼が小竜姫の竜気を使うには小竜姫が竜気を送れる環境に居ないと使えないとの技術的な問題も実はあった。
契約のラインは距離で途切れることはないが、現実的に竜気を送るには強力な結界に阻まれたり距離が離れ過ぎると竜気を送れなくなる。
具体的に美神事務所程度の結界ならば問題はないが、妙神山の結界と東京からの距離は確実に竜気を送れない環境であった。
心眼は小竜姫がGS試験後に竜気を使えない横島がメドーサに狙われる危険性を考え、GS試験を止めるように告げたのだと考えたようである。
「……わかんねえ。 でもこのまま逃げるのは抵抗がある」
そんな心眼が語ったのは横島の今後に関わる重大な問題だった。
しかし横島は覚悟なんてないし、分からないとしか言えないが……。
「出れば小竜姫様の役に立てるんだな?」
「それは確実だ。 少なくとも連中の一人のGS免許を阻止出来るのだからな」
覚悟と言われてしばらく考えていた横島だが、二回戦の開始時間が迫っていた。
「もういいや。 考えても俺には分からん」
小竜姫の涙と笑顔、それに約束のご褒美と今後の危険。
それらが複雑に絡み合い悩んだ横島は最終的に考えるのを放棄して試合場に歩き出す。
何度このまま棄権しようかと考えたか分からない。
今この瞬間もこのまま逃げようかと本気で悩んでもいる。
それでも横島は自分の意思で試合場に向かって歩いていた。
せめてもう一度だけ小竜姫に笑って欲しい。
ただそれだけの為に……。