その一

「勝っちまった……」

そのまま午後になると二次試験は始まるが、横島の相手はやはりドクターカオスだった。

結果的にドクターカオスは反則負けになるが、未来と違うところは心眼が結界を張って横島を守っていたことだろう。

実はこの時代の心眼は小竜姫との契約により存在するため、横島と小竜姫の両方の霊力を使えたのだ。

無論横島が全くの素人なため今の心眼に使える小竜姫の霊力は最高で十分の一がせいぜいだが、それでも常時小竜姫から霊力を供給されてるだけに行動を遠慮する必要がなかったのである。

それにこの時代の小竜姫は横島を守る為に契約と共に心眼を授けたのだから、心眼も横島の成長を促すよりは安全を守るように行動していた。

まあ成長するに越したことはないのだが、小竜姫自身が横島に一から教えるのを楽しみにしてるので、別にこの試験で成長するかしないかはあまり気にしてなかったのだ。

結局心眼が張った結界を破ろうとカオスが足掻いたのだが、マリアの武装の銃を使って反則負けで終わったのである

ちなみに横島はその間怯えながらただ突っ立っていただけだった。


「お疲れさまでした。 どうでしたか?」

「いや~、俺は何にもしてないんだけどいいのかな?」

「いいんですよ。 ルールは守ってます」

試合が終わり控室に戻った横島を笑顔で迎えた小竜姫に、横島自身は多少戸惑ってしまう。

楽にGS免許が欲しいとは言ったが、あまりに楽すぎてズルしてるのではと考えると不安になるらしい。

元々小心者な性格のために、素人の自分が参加することが本当にいいのか不安なようである。

ただ小竜姫としては規則を守ってる以上は、例え規則の盲点を突いたとしても誰にも文句を言わせるつもりはなかった。

まあ小竜姫と令子に文句を言える人間など存在しないのだろうが……。



「小竜姫様のおっしゃる通りでした。 白龍会とは連絡が取れず会長は石にされてました」

その後美神事務所に戻った小竜姫と令子達だったが、唐巣が合流して調査の結果を説明するがどうやら白龍会を早々に突き止めたらしい。

まあこの辺りは歴史を知る小竜姫が、唐巣に調べる範囲の指示を変えるだけでよかった。

未来では一から調べていたが、今回は複数の受験生を出してる事務所を優先して調べさせたのである。

実際複数の受験生を出してるGS事務所は少なく、唐巣はそこから調査を行ったのだから白龍会に早々に行き当たっていた。


「石化された人間は後で神界で治療します。 ですがおそらく証拠になる記憶はないでしょう。 白龍会の資格停止の方はどうなりました?」

「緊急理事会で資格の一時停止が決まりました。 会長以外にも数名の霊能者が石化されてますし行方不明者も居ますから。 今回のGS試験での白龍会の受験生の受験は認めますが、仮にGS免許取得資格を得ても白龍会の調査が終わるまでは免許授与は行われないことになります」

どうやら小竜姫は雪之丞の証言が無くてもメドーサの計画を潰すべく唐巣に根回しをさせていたらしい。

未来よりも早く白龍会の状況を掴んだのをいいことに、白龍会のGS資格の一時停止をさせていたのだ。


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