その一

第二話


西暦3000年

今日もそこは平和であった
一人の竜神の女性は、今日もいつもと同じ日々を過ごしていた。


ここは妙神山修行場

しかしここに修行にくる人間はもう数百年いない……

科学が高度に発達した現代では、GSが命の危険を冒して修行にくる人間はいない


最早修行場の意味は無いが、神族の出張所という意味では必要であり、本当にそこに住むだけである。


竜神の名は小竜姫

人間界に住む神では最強を誇り、幾多の危機を乗り越えた伝説の一柱である


今の妙神山に住むのは彼女一人
彼女の師である斉天大聖老師は神界に行き、かつていた魔族の少女は数百年前に姉のいる魔界に行った


彼女は平和な日々が嫌いな訳ではない…

ただ、やはり一人は寂しかった
ふと思い出すのは、千年前の騒がしい日々…
自分は未熟だった…
危険な戦いがたくさんあった…
世界の危機もあった…


そんな中で出会った一人の青年
自分の最後の弟子だった彼を思い出す

何回思い出しても不思議な人だった
初めは霊能力など無かった、それが短い時間で数々の戦いに勝利した
それは奇跡のようなものだったのかもしれない…
だが、そんな奇跡を起こせるのは彼しかいなかった
現代では伝説の最強GSとして、世界の偉人になっている


今の人々は知らない…
彼は誰よりも心優しく、そして煩悩に溢れた普通の人間だったことを


私は彼が好きだった…
いや、今でも彼を愛してる
私をただの女性として、扱ってくれたのは彼だけだった

しかし昔の自分はそれに気が付かずに、彼と結ばれることは無かった

過去を後悔しても意味はない…
それはわかっている
しかし、もし自分があの時気が付いて少しの勇気を出せたなら……

私の隣には今も彼が居たかもしれない


「横島さん……」

彼女はそっと呟き、一筋の涙が流れた



そんな時
数百年ぶりに修行者が現れた


久しぶりの修行者に彼女は気を取り直して、門を開けて顔を出してみる……


「俺は高島… 生まれる前から愛してました!……」


私は突然の出来事に呆然としていた
顔を見ていきなり手を握り、愛の言葉を言われた


私にそんなことをする馬鹿に会ったのは……

私は彼を見てみる…

姿形も魂も同じだった……


私は彼を抱き締めた……

「私も生まれる前から愛してましたよ。 ずっと会いたかった……」

彼だ!
彼の温かさ
彼の魂
何もかも懐かしい…

私の目には涙が溢れていた


彼は自分から愛の告白をしたくせに戸惑っていた


私は彼に満面の笑みを向けて言った

「二度と離しませんよ? ずっと私を愛してくださいね」


彼は嬉しいような、信じられないような顔だった

今回は私が最初に出会った…
誰にも渡さない

私は戸惑いが消えない、彼の頭に手を回し自分からキスをした


千年待ったファーストキス

彼は顔が真っ赤になっていた


「私の名は小竜姫。 不束者ですがよろしくお願いします。」
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