その一

そのまま喫茶店に行った横島と小竜姫だが、小竜姫は相変わらずニコニコと笑顔のままだった


「小竜姫様、GS試験なんて辞めてこのまま遊びに行きましょうよ」

そんな中で横島はこのまま試験から逃げられないかと真剣に考えている

自分一人なら後が怖くて出来ないが、小竜姫ならなんとかしてくれると考えてるらしい


「GS免許は取っておくと便利ですよ。 心配しなくても終わったら私が一から教えてあげます」

「いやだから俺には霊能力がないんですって」

GS試験という死亡フラグをなんとか回避しようとする横島の考えなど小竜姫にはお見通しである

しかし小竜姫はすでに合格することを前提に話を進めており、話が全く噛み合わない


「私が何の勝算もなく横島さんを試験に出すと思いますか? 私を信じて下さい」

不安そうな表情で小竜姫を説得しようとする横島だが、逆に信じてほしいと言われると言葉に詰まってしまう

自分を信じろと言われると絶対信じれない自信がある横島も、小竜姫ならば信じれない訳ではない

まして昨日に続き先程ご褒美の約束と共にキスをして貰ったのだから、これで信じれないと言えば小竜姫の機嫌を損ねることは確実だった

霊能者同士の戦いへの恐怖とご褒美への期待感の板挟みで悩む横島だったが、小竜姫は何故か楽しそうに見つめている


「一次試験は霊力値を計る審査です。 横島さんはリラックスしてくれればいいだけですよ」

結局横島は小竜姫に流されるままに一次試験の会場に向かっていくが、小竜姫の勝算の意味を全く理解してなかった



「さて横島よ。 準備はいいか?」

一次試験の会場に入った横島はどうしていいのか分からずに戸惑いながらピートに何をするか尋ねるが、その答えは意外な場所から帰ってくる


「んっ、誰だ今の声は?」

「よっ横島さん!? バンダナが……」

何処からともなく聞こえた声に横島は後ろを振り返るが、当然誰も居るはずがない

不思議そうに声の主を探す横島だったが、異変を真っ先に見つけたのはピートだった


「バンダナ?」

「我は竜神小竜姫とおぬしの契約の証である。 主に代わりおぬしを守り導く存在だ」

ピートの言葉に横島は自分のバンダナに何かあるのかと気にするが、当然横島は自分では見えるはずがない

しかしバンダナには目が開いており、未来と同じく横島に語りかける


「契約?」

「今は知らなくていい。 それよりリラックスしろ」

突然バンダナに目が開いて訳のわからないことを言われた横島はポカーンとするが、何故かピートは契約という言葉に固まっていた

正直深く考えても無駄だろうと思った横島はバンダナに言われた通りリラックスしていると、バンダナが横島の霊力を引き出して簡単に一次試験を合格に導いてしまう


「今回はかつての心眼などよりずっと強力な契約です。 今の貴方なら勘九朗相手でも負けませんよ」

一方一次試験の会場の外で待っていた小竜姫は、心配するそぶりさえ見せなかった

そもそも昨日小竜姫が授けたのは未来のような心眼ではなく、小竜姫との確かな契約なのだ

小竜姫以外は誰一人として気付いてないが、せっかく出会った横島を失うようなリスクを小竜姫は負うつもりなどないのである

そのため小竜姫は過去に来て早々に歴史を変えたのであった



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