その一

それでも普段まともな食事の出来ない横島にとって、タマモの料理は有り難かった…

いつの間にか、タマモが来て料理するのを楽しみにしていた……


タマモはすでに、横島の胃袋も支配していたのだ


タマモは鼻歌を歌いながらキツネうどんの準備をする


油揚げは数日前タマモが自分で仕込んだ特製だった


横島は機嫌よく料理するタマモの後ろ姿を自然と眺めていた…


(あいつも、よく来るな~ 最近はシロも来ないからあいつだけだよな~)

横島はタマモが何故来るのか、理解してなかった


シロが来なくなったのは、横島が散歩に付き合わないからだ

横島の摂取カロリーでは、シロの散歩に付き合うのは無理だったのだ


(あいつもな~ あんなに美少女なのに、何が楽しくて家くるんだろ?)

タマモの後ろ姿を見て、横島は首を傾げた


タマモに好かれて嫌な男は居ないだろう…

少し若いが、後2~3年で立派な美女になるのは確かだ


選り取り見取りなはずなのに…

タマモが来るのは横島の家だった


横島はずっと不思議だったが、理由は怖くて聞けなかった


横島自身……


タマモを好きだった……


だがナンパはすれど、本気になればなるほど、奥手になる横島は何も出来ずに見ているだけだった



タマモの作戦は見頃に成功していた


だが…

タマモもそれに気がついてない


そして横島もタマモが何故家に来るのか理解してない


両想いなのに見頃なまでにすれ違っていた



「はい、出来たわよ!」

タマモはアツアツのキツネうどんを運んで来た


「サンキューな… いただきます!」


二人お腹が空いてたのか、勢い良く食べ始めた


「うん、今日もよく出来たわ…」

タマモはキツネうどんの出来に満足していた


「いつもありがとうな… タマモ」

横島は感謝の気持ちを込めて話した


「気にしなくていいわ。 いずれ100倍で返してもらうから…」

タマモは意味ありげな笑みを浮かべていた…


「お前が言うと冗談に聞こえないな~」

横島は苦笑いしていた


「あら、本気よ? 私みたいな美女が料理を作ってあげてるのよ? 100倍でも安いわ」

タマモは横島を見て微笑んだ


「美女と言うには少し早いな~」

横島はタマモの体を見てふと呟いた


タマモはその言葉にピクっと反応した

「そんな事言うならもう作ってあげないわよ!」

タマモは、ほっぺを膨らませて拗ねた表情になる


「タマモ様~! 俺が悪かった! カップ麺生活には戻りたくない!」

横島はタマモにくっつき、すがるように謝りだした


「こらっ! バカ横島! どさくさに紛れてセクハラするな! 美女には早いと言ったのは何処のドイツだ!」

タマモは横島の頭をペシペシと軽く叩きながら、文句をつけた


「いや~ 美女には早いが美少女だ! 色気もある!」

横島は開き直って断言して、タマモにスリスリしていた


「だ~か~ら~ 昼間からセクハラをするな!」

タマモは顔を真っ赤にしながら、横島を引き剥がした

美少女と言われて、色気もあると言われてタマモは照れていた…


「わかった… じゃあ、夜にしよう…」 
 
横島は真剣に考えて再びうどんを食べ出した


「あんたって男は…」

タマモも呆れた様子でうどんを食べ始めた


タマモ自身…

呆れはするが、嫌いにはなれなかった


横島が自分に目を向けてくれるのが嬉しかったのだ


そんないつもの調子で昼食を食べた二人は部屋でゆっくりしていた


「横島~ たまにはどっか行きたいよ~ デジャブーランドとか…!」

タマモは飽きてきたのか、横島に後ろから抱きついておねだりを開始した


これも最初はタマモの作戦だった

他人にはセクハラする癖に自分には見向きもしない横島に、女として意識させようと企んだのだ


その結果…

横島はいつの間にかタマモにもセクハラをするようになるが……


タマモは最初の目的をすっかり忘れていた


いつの間にか、横島とのスキンシップを楽しんでいたのだ


本当は横島をベタ惚れにさせるはずだったが……


いつの間にか、タマモがベタ惚れになっていたのだ

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