その一

嬉しそうに両手を伸ばすルシオラを見て、パピリオは固まっていた


「おーい! パピリオ?」

横島がパピリオに声をかけても返事は無い


「ル…ル…」

パピリオは何かを呟いているようだ


「あぅ~」

赤ん坊のルシオラはパピリオに触りたいようで一生懸命手を伸ばす


「ルシオラちゃんがちっちゃくなっちゃったでちゅ!!」

パピリオは信じられないような表情で、赤ん坊のルシオラを観察する


「そうなんだ~ 俺も理由がわからなくてな~ とりあえず連れて来たんだ」

不思議そうなパピリオに横島も不思議そうに説明した


「ルシオラちゃん…… 良かったでちゅ 復活出来て良かったでちゅ…」

パピリオはルシオラを抱き上げると、嬉しそうに抱きしめた

その瞳からは自然に涙が溢れ止まらない


理由はわからないし、何故赤ん坊なのかもわからないが、パピリオはルシオラが本人だと感じていた


そして、また会えた嬉しさに自然に涙が溢れている


そんな2人の元に小竜姫達がやって来た

「横島さん!?」

小竜姫はその状況を理解出来ない

横島の目の前では、パピリオが知らない赤ん坊を抱きしめて泣いているのだ


「やっぱり本人なのね…」

ヒャクメは珍しく神妙な表情で赤ん坊を見つめている


「ヒャクメ? 本人とはどういう意味です?」

小竜姫は少し困惑気味にヒャクメに問いかける


「この赤ちゃんは…… ルシオラさんなのね」

ヒャクメの呟きに小竜姫とジークは固まる


「そんな… 明らかに霊破片が足りなかったはずでは?」

ジークは驚きルシオラを見つめる


一方ルシオラは、涙を流すパピリオの腕の中で嬉しそうに笑っていた


小竜姫は困惑しながらも、ここでは話を出来ないので横島とルシオラを連れて妙神山に戻っていく

そして仮設の建物の中で事情を聞くことになった


横島は今朝からの出来事を説明するが、事情は見えてこない


「とりあえず、ルシオラさんが復活したことはいい事なんですが… 理由が見えませんね」

小竜姫は首を傾げて考える


「私に任せるのねー!」

ヒャクメは自信満々の様子で、ルシオラを虫眼鏡のような物で覗いていく


「………」

ヒャクメの言葉を横島達は静かに待っていた


「うん! この子はルシオラさんなのね! 転生とかじゃなく復活なのねー 健康とかは問題無いのね!」

ヒャクメは自信満々で言ったが、肝心の復活の理由は言わない


「ヒャクメ、復活した理由はなんですか?」

小竜姫はじらすようなヒャクメを少し睨んでいた


「それは~ わからないのね~」

ヒャクメは苦笑いして誤魔化す


「わからないってどういうことです?」

小竜姫はため息をつきヒャクメを見た


「ルシオラさんの記憶には無いのね… それと、今のルシオラさんは、復活前の記憶は封印されたような状態なのね。 いずれ成長すれば記憶が戻ると思うけど…」

ヒャクメは横島を見てルシオラの状態を説明する


「理由はいいとして、なんで記憶が無いんだ?」

横島は細かい理由はどうでも良かった

問題はルシオラが今後どうなるかである


「それは多分赤ん坊になったせいなのね… 魔力も小さくなったし、成長の為に魂が自然に記憶を封印したのね」

ヒャクメも言葉を選びながら横島に説明する

ヒャクメ自身、よくわからないのだ

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