その一

そんな会話を小竜姫達がしている頃、来客のインターホンが鳴る


「あら、お客様ですかね?」

少し妄想に入っていた小竜姫だが、すぐに現実に戻り玄関に向かう


「こちらに横島忠夫が居ると聞いて来たのですが…」

訪れた来客は、対応に出た小竜姫を値踏みするようにジロジロ見ていた


「はい、横島さんなら居ますが… 失礼ですがどちら様ですか?」

初対面の相手にジロジロ見られた小竜姫はあまりいい気持ちはしないが、ひとまず相手の確認を行う

護衛と言う任務でここに居る以上、怪しい人物かとうか確認する必要があるのだ


「忠夫の母です」

目の前の女性が告げた言葉に、さすがに小竜姫も目を見開いて驚いていた


「これはすいませんでした。 少々お待ち下さい」

小竜姫はあえて玄関に百合子を待たせたまま、横島を呼びに家の中に入っていく


「一応目を離さないで下さい」

途中奥の部屋から事情を見ていたワルキューレに一言頼み、小竜姫は横島を呼びに裏の庭に急ぐ


「おばちゃん誰でちゅか?」

その時、たまたま昼寝から起きたパピリオが百合子と会ってしまう


「私は横島百合子。 忠夫の母よ。 あなたは?」

まだ子供に見えるパピリオに優しく答える百合子

先ほど小竜姫に向けた視線とはまるで違う優しい表情である


「私はパピリオでちゅ。 横島のお母さん… 本物でちゅか?」

驚き問い掛けるパピリオに、百合子は不思議そうな表情をする

まさか本物かと言われるとは思わなかったようだ


「ええ、もちろん本物よ。 パピリオちゃんは忠夫とどんな関係?」

優しい笑顔のままパピリオに話しかける百合子、子供には優しいのだろう


「う~ん、妹でちゅかね。 ルシオラちゃんが居るし……」

「お袋!」

パピリオがそこまで話した時、奥からルシオラを抱えた横島が現れた


「忠夫!!」

その瞬間百合子は殺気を出して横島を睨むが、それ以上動くことは無かった

いや、動けなかったと言っていいだろう


百合子の首筋には小竜姫の神剣が突き付けられ、奥の部屋ではワルキューレが銃口を百合子に向けて引き金に指をかけているのだから


「何者ですか? 母親が横島さんに殺気を向けるはずはありません。 どこの刺客か答えなさい!」

小竜姫の表情は真剣そのものである

百合子が少しでも動けば即座に切り捨てるだろう


「あの… 小竜姫様。 本当のお袋なんすけど…」

緊迫した空気を壊したのは、申し訳なさそうな横島の声である


「本当に本物か? 親に成り済ました刺客と言うのも有り得るぞ。 そもそも何故母親が殺気を向けるのだ」

横島の言葉を聞いても、小竜姫とワルキューレは一切剣と銃をおろす気配は無い

この場にヒャクメが居ればすぐに判断が出来るのだが、あいにく小竜姫とワルキューレでは高度な術を見破るのは不可能である

ワルキューレは慎重に慎重を期して横島に確認していた


「ああ、あんなお袋なんだよ。 二人共剣と銃をおろしてくれ」

困ったように笑う横島に言われて二人はゆっくりと剣と銃をおろすが、油断するつもりはないらしく百合子から目を離さない


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