その一

平和な生活が始まって一ヶ月が過ぎた頃


横島はそろそろ広い庭の手入れを始めようとしていた

ルシオラを抱き抱えながら雑草だらけの庭を歩き、どんな庭にするか考えていく


「やっぱり花がいいかな? ベスパやパピリオの希望だし、ルシオラも喜びそうだしな」

腕の中でニコニコと満面の笑みを向けるルシオラを見ていると、横島は今日も幸せを実感する


「ルシオラは可愛いな~ 世界で一番可愛い赤ちゃんだ!」

「横島、世間ではそういうのを親バカと言うのだぞ」

感動しながら真顔で言い切る横島に、心眼がため息混じりに言葉をかけた


「何を言うか心眼! ルシオラが可愛くないとでも言うのか!!」

「いや、私が言いたいのはそういう事は口に出すなと言うことだ」

ムキになる横島を心眼は冷静に諭してゆく


(精神的成長と共に煩悩を抑えれるようになったのはいいが、今度は親バカ全開になってしまった。 相変わらず極端な性格だな…)

内心ため息をはく心眼


小竜姫やヒャクメ、ワルキューレやベスパ達と一緒に暮らしているにも関わらず

横島はここに住んでから覗きや夜ばいはしてない


無論女性に囲まれている生活で、何も感じない事など有り得ない

小竜姫達の色気に刺激される横島だが、それ以上に赤ちゃんのルシオラへの愛情が勝っていた


恋人としての愛はもちろんあるが、それに保護欲も加わっている

現状のルシオラは恋人と言うより娘に近い

そんなルシオラを幸せにしたいと言う欲求が、かなり高まっていた


「あぅ~」

心眼と言い争いする横島を、ルシオラは不思議そうに見つめている



「また横島のやつ外で騒いでるな…」

その頃家の中では、外で横島と心眼が言い争いをする声を聞いたワルキューレがため息をはく


「ご近所に家は無いですが、あまり騒ぐのも困るんですよね…」

微笑ましいような苦笑いを浮かべた小竜姫が外を見ると、ルシオラが可愛いなどと心眼と言い争いをする声が聞こえた


「私は横島と姉さんが幸せならそれでいいと思うけどな」

同じく外を見つめるベスパは、二人の幸せそうな姿に満足そうな笑みを浮かべている


「しかし、あのまま行けば過保護になりすぎるぞ? さっさと記憶が戻るなら構わんが、十年や二十年はあのままなんだろ? もう少し常識を教えた方がいいと思うが…」

良くも悪くも常識が無い横島に、ワルキューレは不安を隠しきれなかった


「そうですね… やはり母親代わりは必要かもしれませんね」

ワルキューレの言葉にボソッとつぶやく小竜姫

何故か顔が微妙に赤くなっている


「横島も変に考えが堅いからな… いっそ愛人でもたくさん作ればいいんだ」

「あっ…愛人って…」

淡々と話すワルキューレの言葉に小竜姫は顔を真っ赤にした


「別におかしくあるまい。 神魔界ではよくある話だろう。 女性経験が無いからあんなに極端なのだ」

ワルキューレの話に小竜姫は顔を真っ赤にして悶えている

どうやら何かを想像しているらしい


「横島って結構モテるからね… 愛人作る前に常識教えないと、今度は愛人を限りなく増やすんじゃないの?」

しばし無言だったベスパの一言に、ワルキューレと小竜姫は考え込んでしまう


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