その一

それから1ヶ月後


横島とルシオラは関東近郊の某所に居た


「ルシオラ、今日からここが家だぞ」

「あぃ~」

ルシオラは目の前にある少し古い家に興味津々であった


「横島、とりあえず住むのに問題は無いみたいだよ」

家の中から現れたのはベスパとパピリオであった


「やっぱり、俺達が新しい生活を始めるならこの家が一番だな~」

そうつぶやき、懐かしそうに横島達は家を見つめる

この家はかつてルシオラ達がアジトに使っていた家なのだ



何故横島達が再び此処に住むことになったかと言えば、それは約半月前に遡る

妙神山に戻って来た斉天大聖老師の全面協力を得た横島とルシオラは、老師や小竜姫と新しい生活について相談をしていった


その上で決まったことは、GSは辞めること

ベスパとパピリオと4人で暮らすこと


そして神族から小竜姫とヒャクメ、魔族からワルキューレとジークが横島達の護衛に付くことである


横島は詳しく知らないが小竜姫達の護衛はすでに決定していたらしく、常に小竜姫達が全員で護衛する訳では無いが、誰か1人は必ず横島達の家に居ることになるようだ


そして話し合いの結果、横島の希望によりかつてルシオラ達と一晩暮らした家を新たな生活の拠点にすることになった



ちなみに横島の現状についてだが…

すでに美神事務所と高校は辞めている

全て小竜姫が手続きをして、令子も騒ぐことなく納得させたらしい

高校については横島は最後まで悩んだが、どのみち神魔化した横島では人間社会と一定の距離を開けることが必要なため辞めることになった


そんな様々な事情があり、今日は横島達の引っ越しが行われている


「小竜姫達は遅いでちゅね…」

買い物に向かった小竜姫がなかなか戻らないので、パピリオはお腹が空いているようだ

「うーん、まさか道に迷ってたりはしないよな? 小竜姫様は街に疎いからな~」

かつて、天龍事件で散々東京で道に迷った小竜姫を思い出し不安になる横島

本当は一緒にヒャクメが行ったため、道に迷うはずがないのだが…

ヒャクメの存在は忘れてるようだ


「横島よ。 ヒャクメ様が居るのだし迷子は無いと思うが… それに瞬間移動が出来る小竜姫様が迷子になるのか?」

小竜姫を心配する横島に、呆れたように語りかけたのは心眼である

本来は横島の力の制御が役目なのだが、いつの間にか横島のボケの修正までしていた


「だってヒャクメだし… 小竜姫様もたまにぬけてるし…」

心眼に突っ込まれてなお、心配そうな横島にベスパはため息をはく


(一番ぬけてるのは横島… お前だよ)

危うく思ったことを口に出しそうになったベスパは、これから先の生活に微かな不安を感じていた


(もしかして、あたしがみんな面倒見るのか? そう言うのは姉さんの方が得意なんだが…)

目の前にいる横島とルシオラとパピリオを見る

ルシオラは赤ん坊だし、パピリオは子供だ

その上横島もどっかぬけてる


この3人を面倒見るのは並大抵じゃないだろう

ベスパは小竜姫やワルキューレ達に期待をせずには居られなかった
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