その一

「正直考えること多すぎて頭がパンクしそうっすよ。 学校もありますし、新しいバイトも必要ですし、ルシオラの世話も必要ですしね」

お茶を飲んで一息ついた横島は、腕組みしながら今日小竜姫達に言われたことを再び考え始める

だが、どう考えても無理がある

そもそも魔族のルシオラを保育園などに預ける訳にいかないし…

横島1人でルシオラの世話をしながら出来るバイトを考えるが、なかなか思い浮かばない


「私達は人界の生活はちょっとわからないですしね… ただ、私達の誰かがルシオラさんを面倒見る事は必要だと思います。 普通の人間にはルシオラさんを任せられませんから…」

どうやら小竜姫も同じことを考えていたらしく、横島に協力する気でいる


横島を霊能者にしたのは自分だと言う自負がある小竜姫

それは誇りでもあるが、それ以上に責任を感じていた

横島から人としての人生を奪ったのは自分では無いか?

そんな負い目も感じていたのだ


「えっ…!? でもさすがに小竜姫様に子守させる訳にはいきませんよ。 俺が自分でなんとかしますって…」

小竜姫の話に驚く横島だが、さすがに自分のワガママに付き合わせる訳にはいかないと申し訳なさそうである


「私はかまわないのですが……」

「いいお風呂だったのねー!」

申し訳なさそうな横島に、小竜姫はそれを否定しようとした時、お風呂上がりのヒャクメが現れた

ビクッとして言葉が止まる小竜姫は、タイミングの悪いヒャクメを少し睨む


「あれ? どうしたのね?」

小竜姫の変化にヒャクメは心を覗こうとするが…

「ヒャクメ… 友達として忠告します。 心を見たら、明日はありませんよ?」

ちょっと不機嫌そうに睨む小竜姫に、ヒャクメは渇いた笑いを浮かべてしまう


「小竜姫さま…」

「うふふ… 冗談ですよ。 ねっ! ヒャクメ」


怯えたような横島の表情に、小竜姫は笑顔になり笑って隣のヒャクメに話を振る


「そっ… そうなのね~ 何でも無いのね! 本当に何でも無いのね!!」

何故か同じく笑顔になり小竜姫の話に同意するヒャクメ

しかし、彼女の背中には小竜姫の竜気の籠もった左手が何故かあった


「そうっすか…」

ちょっと不思議そうな横島だが、基本的に鈍感な為わからない


「とりあえず、ベスパさんと老師が来たらみんなで考えましょう。 私は協力は惜しみませんよ」

横島が話を一応納得したのを幸いにと、小竜姫は話を変える

「それがいいのねー なんなら私がルシオラさんの面倒見てもいいのねー」

先ほどの小竜姫と同じように、自分を売り込むヒャクメ

どうやら考えてることは同じらしい


「2人共ありがとうございます。 俺とルシオラの為にそこまで気を使って頂いて…」

小竜姫とヒャクメの優しさに横島は感動してじーんとしてしまう


「とりあえず、今夜は交代しながらルシオラさんを見ましょう。 横島さんは先に寝て下さい。 私がしばらくルシオラさんを見てるので」

それぞれの思惑を含みつつ、その日は小竜姫とヒャクメと横島が数時間おきに交代でルシオラを面倒見ることになった


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