GS横島 運命と戦う者

「まだ、本気になれないか?」

(何故だ… 体力があるにしても息一つ切らさないとは…)


霊波刀を構え息も切らさない横島に、西条は未だに驚きが隠せない


「僕はずっと本気だが…?」

横島に本気じゃないように言われた西条は、呼吸を整えながらも困惑したような表情である


「やっぱり、それがお前の長所であり短所だな」

横島の言葉の意味を考える西条だが、理解出来ないようだ

事実、彼は全力なんだし


「なんで銃を使わない? 小竜姫も居るし文珠もある。 当たっても死なないよ。 お前が勝つには銃が必要だろ?」

「妙神山の修行で銃を使うなど…」

横島の言葉を聞いても西条は銃は抜かない

まあ、純粋な勝負のように考えている西条は、どうしても卑怯になるような手段は取れないのだ

それにこれを霊能の修行の一貫として考える西条は、どうしても実力に銃を入れて考えてない


「美神さん達を軽蔑する気持ちはよく解る。 俺だってあの人達を認めないしな。 でもな西条、あの人達の生きる執念や手段を選ばない戦い方は一流だ。 そしてお前にはそれが無い」

勝負の最中にも関わらず、横島の言葉を聞いた西条はその場に立ち尽くして警戒を辞めてしまう

そして横島から出た、令子や美智恵の話になんと答えていいかわからない


「中途半端な正義感は身を滅ぼすぞ? お前にはお前の正義があるように、相手にも相手の正義がある。 生き抜いてこそ、正義を示せるんだ。 戦い方に中途半端に正義を混ぜるなよ」

淡々と語る横島に、さすがの西条はムッとする

聞き取り方によっては、美神親子より劣るように聞こえるのだ


「しかし僕には… ぐはっ…」

何かを語りかけた西条だが、突然吹っ飛ばされてしまう

西条自身、自分が何故吹っ飛んだか理解出来ない


「戦いの最中に油断するなよ。 考えるのはいいが悩むな」

横島はさっきから変わらず立っており、動いた様子も無い

西条は吹っ飛んだ原因を考えるが…


「まさか… 超加速か…」

思い付いた手段は一つしかない

横島が動かなかったのでは無く、動いたのが見えないとしか思えなかった


「当たりだ。 さあ、どうする? これでも戦い方にこだわるか? それとも、妖怪は殺せても人間は殺せないか? 同じ生きてるのに…」

横島はいつの間にか西条を睨むように語っている


「僕は社会や弱者を守りたいんだ」

小さくつぶやいた西条は、ようやく左手で銃を抜いて横島に突き付けた


「どうした? 撃てよ。 わざわざ超加速を見せたんだぞ! 銃弾なんていつでもかわせる」

動く気配の無い横島は、平然と西条に撃てと言い切る



最早勝負にもなってない横島と西条の二人を、ルシオラ達は無言で見つめていた


「横島もそうだったが、甘いな人間は…」

静かな空間でポツリとつぶやいたのはワルキューレである


彼女が30年以上も掛けて横島に教え込んだ神髄が、今の横島の行動に現れていた

そう、横島の最大の弱点である戦闘中の甘さを徹底的にワルキューレは鍛えあげていたのだ


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