GS横島 運命と戦う者

そんな食事が終わると一同は異空間の修行場に居た

ちなみに罰を受けていたヒャクメも、一時的に解放されて一緒に居る


「これが噂の修業場か~」

かつて令子から少し聞いたシャドーを使った修業の話を思い出し、西条は珍しげに辺りを見回す


「さて、西条さん。 せっかくいらしたのですから一つ修業をして行きませんか?」

優しい笑顔ではなく、武神らしく真剣な表情の小竜姫が西条に一つの提案をした


この修業場に西条を連れて来たのは横島である

実は横島は小竜姫達にある一つのお願いをしていた


「よろしいのですか?」

少し困惑気味の西条は迷うように小竜姫を見る


妙神山には純粋に横島に会いに来たので、まさか小竜姫からそんな提案をされるとは思っても居なかった


「ええ、ではルールを説明します。 西条さんには一対一で横島さんと戦って頂きます。 西条さんが横島さんに一撃を入れたら、通常シャドーの修業で得られる能力のアップを差し上げます」

小竜姫の説明に西条は驚きを隠せない

文珠などの能力は横島が上だが、それでも経験や総合力では負けるつもりはないのだ

まさか条件が一撃入れるだけだとは思わなかった


「しかし… いくら横島君が強くなったとはいえ、一撃を入れるくらいは…」

生真面目な西条は、自分に有利過ぎると思った条件を素直に受け入れることが出来ない


「今の横島さんは、貴方が知る彼ではありません。 仮に私でも一撃を入れるのは簡単では無いですよ。 西条さんの実力を考えてもかなり厳しい条件です。 止めますか?」

真剣に話す小竜姫の表情を見ながら西条は考える

小竜姫が嘘や冗談を言う神で無いのはわかっている

ならば……


「お願いします」

頭を下げスーツの上着を脱ぐ西条の向かいでは、横島が体を動かし準備運動をしていた



「あの西条って人がどれだけ強くても、今の横島だと勝負にもならないでしょうね…」

「まあ、勝ち負けを決めるならね」

一方少し離れた場所では、タマモとルシオラが意味深な会話をしていた

そしてその周りでは、ヒャクメやワルキューレ達も横島と西条を静かに見守っている



「では、初めて下さい」

そんな中、小竜姫は一言告げて少し離れた

同時に西条は霊剣ジャスティスを、横島は霊波刀を構える


「ずいぶん腕を上げたみたいだね。 初めて戦った時を思い出すと驚きだよ」

真剣に横島を探る西条は、その雰囲気に驚きを隠せない

霊力や気配や体の動き、どれをとっても前の横島とは別人のようであった


「本気で力を求めたからな… もう自分の無力で大切な人を犠牲にするのだけはごめんだ」

横島の決意に満ちた表情を、西条はのまれるように見つめる


「君は変わったな… だが、僕もまだまだ負ける気は無い! 勝ちに行くぞ!!」

西条は決意を込めた言葉を宣言し、霊力を高めて走り出す


そうして、横島と西条の最後の戦いが始まった



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