GS横島 運命と戦う者

西条は賑やかに酒を酌み交わす横島と神魔達を、少し羨ましそうに見つめて酒を飲み続ける


「横島君は変わらないな… どこに居ても君のままだ…」

西条は少し羨ましそうに呟く


そう…

横島は相手が誰であれ変わらない

恐れもしないし、敬いもしない

相手と対等に付き合うからこそ、神魔妖関係無く仲間が集まる


そんな、横島の本質的な魅力が西条は羨ましかった


「それに…、大人になったな…」

僅かな期間で大人になった、横島の精神的な成長に驚いている

かつての横島なら、自分の為に送別会などしなかっただろうと…


「横島さんは、ルシオラさんと出会って変わりましたからね」

そんな呟きが聞こえていた小竜姫は、1人酒を飲む西条に話しかける


西条が小竜姫を見ると、小竜姫の横島を見つめる表情は恋する女性そのものだ

西条自身、小竜姫を良く知らないが…

話に聞いた堅物なイメージとは、かけ離れた乙女に見えた


「横島君はここで幸せなのだね…」

西条は、ルシオラと言う恋人が居ながら、更に小竜姫にも愛されている横島をやはり羨ましく思う


前の西条はそんな自分の気持ちを認めなかった

だが、素直に横島を羨ましく思う西条

彼も美神親子と離れて成長していた


「横島さんは誰よりも幸せになる資格があります。 人間らしい幸せは難しいかもしれない… ですが、私達が横島さんを幸せにします」

この時の小竜姫の言葉と美しすぎる表情は、西条の心に強く焼き付く


「結局、横島君には勝てなかったな…」

西条は少し苦笑いしている

横島とその周りの笑顔を見ると、西条は自分の完全敗北を悟る

西条の周りに、あんな笑顔を向ける人物は居ない

長年支えた美智恵は決別後は口も聞かなくなったし、幼い頃から可愛がって来た令子も、西条の最後の言葉すら届かなかった

西条は改めて横島の凄さを実感している


「あなたは、横島さんではありません。 自分の道を貫きなさい」

小竜姫は少し弱気な西条に強い口調で、そんな言葉をかける

「わかってます。 ただ…、少し羨ましかっただけです」

西条は少し困ったように答え、横島を見つめる


その後、横島は更に西条に酒を進めて、西条が潰れるまで飲ませた


「これで良かったの?」

酔いつぶれている西条を見て、タマモが横島に問いかける


神魔や横島は酒に酔いはするが、潰れることはまずない

それに比べて、人間の西条は一番酒が弱いのは仕方無い現実だった

そして周りでは、ルシオラや老師達も西条を見ている


「ああ…、こいつとは前世からの付き合いだが、まともに話したことも無かったからな…」

横島は少し照れたように微笑んでいる


「言葉では伝わらないことも、伝わったでしょう」

小竜姫は横島の意図を理解しているようだ

あれこれ難しいことを話すより、一緒に酒を飲むのが一番の餞別になる

横島はそう思っていたのだ


「さて、飲みなおすかの…」

老師はそんな横島と西条を見て、再び飲み始める

そして西条を布団に寝かせて、横島達も酒を飲んでいく


結局西条は、妙神山に泊まることになる


そしてこの日が、この時代の横島と西条の、最初で最後の酒を酌み交わす日となる


54/60ページ
スキ