次の日

朝早くからオカルトＧメンの美智恵の部屋に西条が呼ばれていた

「西条君、私はＧメンを辞めるわ。　私は令子を守る為にオカルトＧメンに入ったんですもの。　令子を守れないなら未練は無いわ」

美智恵は一晩でいつもと同じ自信に満ちた笑顔に戻っている

「そうですか…」

一方西条の表情は冴えない

まだ現実を直視出来てないのだ

それに昨夜雪之丞に言われた言葉が心を駆け巡っている

（先生はやはり令子ちゃんしか見てない…）

西条は心で呟く

まだ現実を直視出来てない西条だが、少し変わっていた

それは、何故自分がこの親子にこうまで振り回されなければならないのか…

そんな疑問が浮かんでいる


よく考えると西条が求めていた令子は、昔の面影を忘れるほど変わり果てている

正直西条は、あの価値観や考え方に着いていけない

プライドの高い西条には、あんな非社会的な生き方は認められないのだ


今までは余裕があったため、昔の面影を追いかけて令子の悪い面に目を瞑って来たが…

令子や美智恵が原因で自分が理不尽に左遷され、美智恵はそれでも令子しか見てない

その現実と雪之丞に言われた言葉で、西条は美智恵や令子を疑念を持っていた


美智恵に対しては恩師であり上司である

義理や人情でやり方に口を挟まなかったが…

疑念を持つと、様々な不満や苛立ちも感じ始めていた


「西条君、私に着いて来ない？　とりあえず、ＧＳになって体制を立て直すわ」

美智恵は笑顔で西条を誘う

西条は美智恵の子飼いの人材だ

この先を考えると、どうしても抑えておきたい人物である


しかし…

美智恵は西条の気持ちを考えてない


（横島君、僕はやっと君の気持ちを理解したかもしれない…）

西条は天敵ともライバルとも思っていた横島に心で語りかけていた


（僕は元々、社会の為…　弱者の為にオカルトＧメンに入ったんだ！）

西条の目に力が戻る

美智恵はその瞬間、ニッコリと微笑んだ

西条が自分に着いてくると決断したと理解したのだ

今まで何があっても着いてきた西条が、今更自分から離れるはずはないと本気で考えている


「お断りします。　僕はこの仕事に誇りを持ってます。　たとえ何処に飛ばされても、社会の為、弱者の為にこの仕事を続けます！」

その時、西条は昔の表情に戻っていた

最近は令子や美智恵に振り回さて疲れた表情ばかりだったが、それとは全く違った表情である


「西条君……」

美智恵は驚き西条を見つめる


「Ｇメンに残っても出世は出来ないわよ？」

美智恵は険しい表情になり西条に問いかける

西条がＧメンを続ける意味を理解しているのか確認したのだ

「はい、僕は僕のやり方でこれからは頑張って行きます。」

西条の力強い表情と言葉に、美智恵は苦虫を噛み潰したような表情になる


「そう…　それが君の決断なら私はもう言うことは無いわ」

美智恵は理解した

西条まで自分達を見捨てたと…

そしてその瞬間、西条も敵と判断した


「先生には今までお世話になりました」

西条は最後まで恩師への礼儀を尽くして深く頭を下げて部屋を去った


１人残された美智恵は世界を睨むように外を見つめる

「私は元々１人で令子を守って来たのよ！　令子は最後まで私が守るわ！」

美智恵は自身と娘の運命を呪うように強い言葉を口にする