番外編・ルシオラ達の海水浴

そんな大樹の運転する車は、賑やかなまま高速道路に入っていた

そして一時間ほど走って、休憩の為にサービスエリアに到着する


「人間も便利な物を作りましたね~ 昔はこれほど快適な乗り物などなかったですよ」

サービスエリアで飲み物を買いつつ、小竜姫は時代の流れの速さに感心していた

この時代に来てからも電車やバスはともかく乗用車にはあまり乗る機会が無く、始めて乗った車の乗り心地に思わず感動していたようだ


「確かに江戸時代のかごよりは乗り心地いいだろうな」

「あれは揺れて結構大変なんですよ。 馬も快適とは言えませんし……」

車に感動する小竜姫の姿に、横島は未来での小竜姫が東京に来た時を思い出していた

時代劇の姿でかごに乗って来た小竜姫が思わず懐かしく感じる


「これも美味しそうね」

「私はこっちがいいわ」

一方ルシオラとタマモの二人は、軽食販売コーナーで普段見ない食べ物に興味を示し次々に買い込んでいた

人間と違い太る心配などない存在なだけに、遠慮なく買い込んでいるようである



さて休憩を終えた一行はそれから40分ほど走って高速を降りて、そこから更に30分ほど走って海に到着していた


「綺麗な海ね」

車から降りると潮風の香りが鼻をくすぐり、横島達に海に来た事を実感させる

ルシオラは久しぶりに見た海に、思わず懐かしい過去を思い出してしまう

あの奇跡のような出会いがあればこそ今があると思うと、感慨深いものがあった


(こんな平和な日がずっと続けばいいのにね……)

横島が居て小竜姫が居てタマモが居る

そして横島の両親とも仲良くなった現状は、かつてのルシオラから見れば考えられないほど幸せだった

やがて時が来れば戦いに戻らねばならない運命を考えると、この幸せが少しでも長く続いて欲しいと願ってしまう


そして……

まだ見ぬこの世界の妹達と一緒に同じ幸せを感じたいと願うのは、当然の事だった



「母さん達は先に場所を確保しとくから、あんた達は水着買ってから来なさい。 近くに店があるみたいだから」

ルシオラが少し考え込んでる間に、百合子と大樹は荷物を持って一足先に海に向かって行く

そして横島達は水着を買いに近くの店に行く事になった


「こんなの着て人前に出るのですか!?」

店に入ったはいいが、小竜姫は店頭のマネキンが来た際どい水着に顔を真っ赤にして口をパクパクしている

神族としてのこだわりはすでにないが、やはり人前で水着になるのはかなり抵抗があるようだ


「もっと大人しいやつあるよ。 まあ小竜姫ならあれも似合いそうだけど」

イマイチ価値観が古い部分がある小竜姫に横島は苦笑いを浮かべて、大人しめの水着の方へ連れていく

残るルシオラとタマモだが、こちらは水着になるのにそれほど抵抗がないらしく楽しそうに水着を選び始めている

店は開店したばかりの時間だが、すでに数人の客がおり賑やかに水着を選んでいた

なかなか現地で水着を買う人など居ないだろうと横島は考えていたが、案外同じような人が居るようである


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