真の歴史へ・その四

さて帰宅した小竜姫と美衣はすぐに夕食の支度に入るが、常時十人以上の食事を作るのは楽ではない

横島達四人にヒャクメ・斉天大聖・愛子・おキヌ・雪之丞・美衣・ケイに人狼の二人と、来たり来なかったりするメドーサや花戸親子や貧もたまに夕食を食べに来るものだから作る量も大変である

まあそれでもかつては一人で食事をしていた小竜姫や、親子二人だけで食事をしていた美衣は楽しげではあるのだが


「アジは新鮮ですからたたきでどうですか?」

「そうですね。 ではお願いします。 私は鶏肉をから揚げにしますから」

二人はさっそく調理を始めるが、流石に慣れてるだけに手際がいい

美衣がアジをたたきにする間に小竜姫は大量の鶏肉をから揚げにすべく下処理をしていく

同時進行で野菜のポトフなども作っていくが、料理が進むに従っておキヌ達が帰って来るなど賑やかになっていた



「家庭訪問ですか?」

さて外出から帰宅したおキヌ達三人は、居住スペースで雪之丞とくつろぐ鬼道に驚いてしまう

割といろんな人が出入りするだけに知らない人が居るのは珍しくはないが、流石に担任が居ると多少緊張してしまうらしい


「いや、今日は小竜姫様に個人的な相談があったんや」

そんなおキヌ達に鬼道は詳しい話を避けつつも、個人的な相談だといいおキヌ達を安心させる



結局そのままの流れで夕食になるのだが、それは鬼道の人生では体験したことがないモノだった

とは言ってもそれほど特別なことは何一つなくごくごく普通の食事風景なのだが、一般的な家庭を知らない鬼道にとってはそれは言葉に出来ない感情が込み上げて来るモノだったのだから

あまり詳しく詮索はしてないのでよく分からないが、神魔と妖怪が入り混じったこの食事風景は霊能者としての価値観を根底から崩すものに近い


(あの子達が弓を理解出来ん訳やな)

羨ましくも感じるおキヌ達の環境に、鬼道はかおりとおキヌ達の価値観の違いに気付き僅かに考え込む

元々小竜姫の関係から普通の生徒とは別に考えていたが、実際はそれ以上だった

現状のおキヌ達に既存の霊能者の価値観を理解させるのは簡単ではない


「ありがとうございました。 少し何かが見えた気がしますわ」

「よかったらいつでもいらして下さい」

その後食事を終えると雪之丞達が帰ることになり鬼道も帰るのだが、その表情は少し余裕が見える程度に改善していた

無論おキヌ達とかおりの問題が難しいのは変わらないが、小竜姫達の生活に鬼道は自身が霊能者としていかに狭いかを改めて実感して新たな希望を見出だしたことは確かだろう


「あいつ真面目過ぎじゃないか?」

「そうですね。 私もそう思いますよ。 まるで昔の自分を見ている気分です」

鬼道が帰った後、横島は少しホッとしたような小竜姫に声をかけていた

元々かおりとおキヌ達の問題は、教師がそこまで気にする問題ではないと横島は考えている

ただ小竜姫はそんな真面目過ぎる鬼道にどこか共感できる部分を感じていた

それは小竜姫が本来持っている生真面目さと似ていたからかもしれない

何はともあれいろいろあった一日が終わる



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