真の歴史へ・その四

「しかし、ややこしいことになったもんだな」

「人間の裏側なんてそんなもんでしょ」

帰宅して早々に風呂に入った横島とタマモだったが、湯舟に浸かりながら今日の事を整理していた

偶然ではないとすると何かしらの意図があるはずだが、それの真意がイマイチ掴めない

隠しカメラの存在から推測して何かのテストだとしても、あそこまで騒ぎになり戦車など持ち出せば相当の注目を集めて、結果いろいろ背後関係を調べられるのは当然なのだ

あれだけの準備をした割には迂闊だと考えると、何か別の真意があるとも思える


「それにしてもあのネズミは厄介だよな~」

「ネクロマンサーよりはそれを応用して人を操る方に特化させたのかも…… あんなのが世界に散らばったら面白いことになるわね」

加えて事件の背後関係もそうだが、横島とタマモはネクロマンサーネズミ自体の危険性に頭を悩ませていた

霊波攻撃に慣れていたかつての横島ですら防げなかった、ネクロマンサーネズミの霊波を一般人が防げるはずがない

あのネズミの繁殖力や子供への能力の伝達具合が分からないため何とも言えないが、仮にあのネズミが普通のネズミのように殖えたら人間の世界は簡単に滅びるだろう


「世界を裏から操ることでも企んでるのかしら?」

「素直に冗談だと笑えんとこが怖いな」

ネクロマンサーネズミの最終的な利用法の果ての世界を想像するタマモに横島は渇いた笑顔を見せるが、否定をするだけの証拠も自信も横島にはない

倫理やモラルなんてものが簡単に消えてなくなることなど、未来で嫌というほど経験したのだ

もしあのネクロマンサーネズミを完全にコントロール出来るとすれば、その者は必ずや他者を操りゆくゆくは世界を操ろうと考えても何の不思議もない

まあこれはあくまでも最悪の場合の推測だが、実際にそこまで出来なくてもあのネクロマンサーネズミが脅威である事実には変わりはなかった


「とりあえず最優先で調べて貰うしかないな。 おそらく黒幕はあいつらなんだろうけど……」

少し険しい表情で言い切る横島に、タマモは何故か微妙な表情を見せている


「ねえ、真面目な話してる時にその手を動かすのはどうかと思うわよ」

タマモが微妙な表情をしていた理由は湯舟の中の横島の手の動きにあった

具体的な行動は言えないが、横島は真面目な表情で話をしながらも湯舟の中ではずっとお楽しみの最中だったのだ


「いや、目の前にあるとどうしてもな……」

タマモの指摘に横島はごまかすような笑顔を浮かべるが、その行動が止まることはないままである

結局二人はそれからしばらくお風呂から出て来なかったらしい



「なんでこうも次から次へと厄介なことが増えるのかしら?」

一方ルシオラは研究室にてネクロマンサーネズミの解析を最優先で進めていたが、また余計な厄介事が増えた現状に疲れた表情を見せる


「また面白いモノを持ち帰って来たのねー これは自然に発生したネズミじゃないわ」

ため息混じりに作業するルシオラと対照的に、ヒャクメは好奇心むきだしでネクロマンサーネズミを調査していた

その能力は役に立つのだが、性格が相変わらずなことにルシオラは苦笑いを隠せなかった


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