真の歴史へ・その四

(僕は今、とても貴重な体験をしてるんだけど……)

その後小竜姫に促されるままに修行に参加する鬼道だが、悩みを相談に来たはずなのに何故か小竜姫に指導されてる現状が不思議で仕方なかった

本来ならば望んでもなかなか叶わないような光栄なことなのだが、かつて小竜姫に刃を向けた自分が受けていいのかと疑問も感じてしまうのだ



「小竜姫は相変わらずなのねー」

「根っからの神族なのよ。 真面目過ぎて苦しむ彼を放っておけないんだわ」

一方離れた場所で小竜姫と二人のやり取りを見ていたヒャクメとルシオラは、小竜姫らしさに笑みを浮かべていた

なんだかんだ言っても小竜姫は神族だし、迷い悩む者を放っておけないのだ

それに一つ言えるのは、真面目な鬼道は小竜姫に気に入られてるという事だろう

以前小竜姫が与えたアドバイスを的確に守っていた鬼道の努力が実ったとも言えるが……


「そうです。 その調子ですよ。 霊力とは魂の力なのですから、潜在的な力量は人間ならばみんな同じなのです」

雪之丞と同時に鬼道を指導する小竜姫だが、霊力量を増やす修行を重点的に行っている

魂から流れる霊力を経路を通してチャクラに正確に回していくと言う基礎的な修行だったが、現代でそこまで修行出来るのは人界では数えるほどしかいないだろう

そのまま鬼道の修行は日が暮れるまで続いていくことになる



「あんた、なかなかやるな。 正直簡単に勝てると思ったよ」

修行が終わった鬼道は雪之丞に誘われるままに風呂に入っていたが、そこは湯舟だけでも四~五人は楽に入れるほど広い風呂場だった

実は元々あった風呂は狭く二人くらいしか入れない為、少し前に横島達が広げて改築していたのだ

しかもお湯は妙神山の霊泉を引いてる天然温泉であり、二十四時間源泉かけ流しである

住人がどんどん増えるだけに、いつでも入れる風呂は必要不可欠だった


「僕は幼い頃から六道家を倒す事だけを教えられて来たから、その分他の人よりは修行はして来てるんや」

いつもと同じ修行なだけに雪之丞は割と元気だが、鬼道は少し疲れた表情である

流石に小竜姫の修行だけあって安全には気を配ってはいるが、やはり霊能的には厳しい修行であった


「ああ、そういやああの親父だもんな」

「正直、僕は今日の小竜姫様に戸惑ってますわ」

「いや普段は今日みたいな感じだぞ。 というかあの人があれだけ怒ったのは、あんたの親父くらいしか俺も見たことがない」

鬼道の父親を思い出し何とも言えない表情を見せる雪之丞だが、鬼道は相変わらず小竜姫の態度に戸惑っている

しかし雪之丞としては鬼道の価値観をあまり理解出来ないらしい


「そうか……」

普段の小竜姫を改めて聞いた鬼道は、そんな小竜姫を怒らせた自分と父親がいかに愚かだったか痛感する

しかし小竜姫は父親はともかく鬼道に対してそこまで怒りを感じてない事実を、鬼道は気付いてなかった


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