真の歴史へ・その四

「そこまでにしておきましょうか」

雪之丞と鬼道の勝負は決着が付かなかった

結局鬼道は実力差から勝利を諦め徹底的に逃げと防戦に終始したのだ

勝てないのは仕方ないが負けない戦いに終始したのである


「二人とも自分に欠けてるモノが見えたでしょう」

息を切らして地面に座り込む二人に小竜姫は今回の反省点を話し始めた

雪之丞は勝てる手応えがあったようで悔しそうであり、まともに戦ってもらえなかっただけにストレスが溜まってるような表情である

一方の鬼道は表情こそ悔しそうだが、今の力量で最大限の成果は残していた

勝負と考えるならば引き分けだが、GSの模擬実戦と考えるならば負けなかった鬼道の勝ちだろう


「雪之丞さん、貴方は鬼道さんの戦い方を身につけなさい。 相手が貴方の戦い方に合わせてくれるなど実戦ではありませんから。 決して負けない戦い方を覚えねばなりませんよ」

勝負が終わった雪之丞はどうやれば勝てたのかを考えていたが、小竜姫はそれよりも負けない戦いをした鬼道の戦いを学んで欲しかった

無論今までも小竜姫達はそれほど馬鹿正直な戦い方ばかりを教えていた訳ではなく、あらゆる事態に対応出来るように教え来ていた

特にタマモは力押し以外の戦い方を熱心に教えていたが、元々の性格や実力差もあり雪之丞はあまり理解してなかったのだ

奇しくも同じように修行しているピートも雪之丞と同じで真正面から戦うことを好むため、雪之丞は戦術面での成長が遅かった

今回逆に雪之丞より弱い鬼道が相手だけに、雪之丞には戦い方を学ぶいい経験になったのは確かである


「さて鬼道さんですが、貴方はあれからも基礎訓練をしっかりしているようですね。 霊力値が僅かですが上昇してます。 今日は雪之丞さんと一緒に基礎修行をしていきませんか?」

雪之丞に続いて鬼道にも声をかける小竜姫だが、鬼道は以前式神勝負をした時より確実に実力を上げていた

しかしその成長は雪之丞に比べるとやはり遅い


そもそも霊力を上げる修行はその危険性や難易度から、現代の霊能者には伝わってない技術が多かった

まあ一番シンプルな方法では霊力を限界ぎりぎりまで振り絞り使っては回復させる事で霊力量を増加させる方法もあるが、この一番シンプルな方法でさえ危険性が高いのだ

従って現代のGSの大半は、天性の霊力量や才能がほぼ全てを決めてしまう


しかし小竜姫の場合は人間の眠れる才能や潜在能力を引き出すことが出来るため別格だった

その気になれば一般人を一流の霊能者に育てることも不可能ではない

元々霊能力は魂があれば存在する力だし、魂がある存在ならば確かな修行をすれば使える力なのだ

まあ安全に配慮して修行出来るその技術は人間には無理な領域であり、元々妙神山管理人として人界での修行が専門の小竜姫にしか出来ないことだったが……


「共に相手の長所をよく学び取り入れて下さい」

優しく微笑む小竜姫の柔らかい笑顔は、鬼道は思わず小竜姫が神族だと忘れそうになるほどだった



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